Classroom management in Japanese EFL classrooms

文献概要

今回紹介する文献はSakui(2007)Classroom management in Japanese EFL classroomsです。

このブログの最初の文献として日本のEFL(English as a Foreign Language)環境がどういった現状であるかを整理しようと思います。論文自体は2007年であり、その当時の状況から改善されている部分はもちろんありますが、日本の英語教師に求められていることや、コミュニケーション活動を行うことでの弊害、そして、生徒たちの変化については現在にも通じるものがあると思います。

皆さんの研究の役に立てたら幸いです。

研究背景

指導運営はどの国においても重要な分野であり、Kagan(1992)は教員は教科の知識と指導運営の知識の2つを持っている必要があると主張している。

日本においての指導運営に関する調査として、Wakazono(2001)では小中高の教員への指導運営についての意識調査を実施し、参加者の25%超が指導運営において何かしらの問題を経験したことがあり、特に中学校ではその数はさらに多くなった。回答の中には、子供の様子も時代と共に変わってきて、少人数での授業を唯一の解決策と考えているものもあった。

日本の英語教育では、従来の文法訳読方式からコミュニケーションを重視した授業形態が求められるようになり、Communicative Language Teaching(以下、CLT)の要素を取り入れた授業形態が中等教育において徐々に取り入れられ(Sakui, 2004)、英語でのコミュニケーション能力を育成することを英語教育の主な目的としている(Monbukagakusho, 1999)。

ここまでの日本の指導運営と英語教育についての概観の中で、筆者は日本の英語教師の現状を下記のように述べている。

The teachers feel responsible for preparing students for grammar-skewed entrance examinations, and at the same time they feel pressured to teach English communicatively in order to satisfy the new guidelines. While the teachers face the challenge of meeting two separate instructional goals, they also have to deal with an increasing number of classroom management problems (p. 44).

実験

参加者

  • カセ:中学校教員 教職経験19年
  • ハマダ:中学校教員 教職経験8年
  • ツダ:高校教員 教職経験15年

方法

  • カセとツダへの1年間の授業見学とインタビューを実施した(ハマダへは6ヶ月)。
  • 他にも15名の教員へのインタビューを実施した(授業観察は実施せず)。
  • インタビューは録音した上で英語に翻訳され、それらの分析をグラウンデッドセオリー(Straus & Corbin, 1998)で質的に行った。
  • 研究当初はResearch questionが決められていなかったが、分析の中で指導運営というテーマに至った。

結果

結果として、以下の2つのことがわかった。

  • CLTと指導運営の均衡
  • 直面する指導運営の困難への教員の認識

CLTと指導運営の均衡については、以下の3つに分けられる。

まず、教員が前に立って行う従来の指導に比べて、CLTの形態では、生徒たちはペアやグループで個々に活動に取り組むため、教員はそれぞれの活動を同時に管理する必要がある。筆者はCLT活動で観察した授業の状況について次のように述べている。

The teacher’s attention often seemed to be consumed in managing these problematic groups and was not focused on academic matters, whereas groups that were on task tended to be left alone and did not receive any encouragement or monitoring of their performance (p. 47).

次に、従来の授業では生徒は静かに集中して聴くことを求められていたのに対して、CLTではその役割だけでなく活発に発言することも求められる。これにより、CLTの活動では生徒たちは個々に取り組む責任を持つことになるが、取り組む気持ちのない生徒がいればその活動を止めてしまう可能性もある。教員側では、コミュニケーション活動の実施を授業で求められる一方で、カリキュラムや入試のために授業で毎回行うことは難しいという現状がある。さらに、教員がこれまで求めていた役割から変わっていることを生徒に十分に伝えることができていなかった。

また、これまでの授業では音読や翻訳のようにあまり負荷のかからない活動が中心であった一方で、CLTの活動は生徒にとってその目的や手順を理解することが難しい。この研究で紹介された活動について筆者は、活動がそこで使用を求めていた表現の構造より複雑なものになっており、生徒たちは何をすればいいのかわからない状況に陥っていたと述べている。

そして、指導運営の困難への教員の認識については、参加者の教員全員が指導運営の問題がCLTに限ったものではないと同意した上で、指導運営においての問題の原因として次を挙げた。

  • クラスサイズが大き過ぎる。大きなクラスサイズは指導運営上の困難を起こす様々な異なる生徒が多くいることになる。また、生徒の様子は地域や家庭の状況を反映している。
  • 生徒たちの価値観が変わっている。親たちによりこれまでの教員への敬意が落ち、そしてCDや映画があるにもかかわらず生徒たちは時代遅れのビデオテープで授業を受けている。
  • 教員と生徒の権限の関係が複雑である。生徒たちが悪い行動をとった際に権限を示す必要があると答える教員がいるのに対して、教員ができることには限界があり生徒間でプレッシャーを与え合うこともできるという教員もいた。

考察

この研究の結果からの考察を筆者は以下のように挙げている。

  • 授業者は、生徒が常に適切に行動するわけではない環境で授業を行っており、大抵の問題を学校に頼ることなく自分自身で対応することが求められている。
  • 参加者は、教員への地域の価値観の変化や教員と生徒での権力関係など、様々な観点で指導運営について分析を行い、その対処法について考えていたが、どういった点でCLTが指導運営を難しくして、どうすれば問題を軽減することができるかについては苦手のようであった。
  • CLTと指導運営を確保していくことはこの研究に限った問題ではなく、CLTのような協働学習であり進歩主義的な(progressive)学習はどの学年やどの教科においても頻繁には行われていない。
  • CLTのようなコミュニカティブな授業形態はコミュニケーション能力の育成へは寄与しているかもしれないが、指導運営をより困難なものにする傾向がある。
  • より進歩的なコミュニカティブな授業を推奨する一方で、言語指導の研究者はこの授業形態が指導運営を難しくしていることを見落としているようである。

示唆

筆者はこの研究から以下を示唆している。

  • より質の高い教員養成を設立し、指導法や指導運営に関する知識や方略のしっかりとした背景を提供する。
  • 社会政治的で文化的な背景の指導への理解に加えて、指導運営の観点から授業を熟考できるように教員は訓練する必要がある。
  • 教員が自分の実践を分析できるように、指導運営を概念化するための枠組みを作る必要がある。

この文献を読んで

この研究では、現在英語においてますます求められるようになるコミュニカティブな授業と指導運営の関係について実際の授業での観察と教員へインタビューを基に、日本の英語授業がどういった現状であるか客観的に分析が行われました。CLTの授業は、コミュニケーション能力の育成という観点では役に立つ一方で、指導運営という観点では必ずしも良い影響を持つわけではないことが報告されました。

この文献を読みながら、自分自身の授業でも、コミュニケーション活動中の生徒が取り組んでいるかの把握で時間が奪われ、生徒たちの英語に注目することができていなかったことや、目標とした言語材料を使わせることを目的としたばかりに、活動が複雑になり、生徒たちが困ってしまったことなど、はっと思い出したことが多かったです。この文献はコミュニケーション活動を行うことでの弊害を整理し、今後コミュニケーション活動を日本のEFL環境でどのように指導運営と両立させて、改善させていくことができるかを示唆してくれていると思います。

この文献に興味を持った人は是非「文献情報」から文献にアクセスしてみてください!

文献情報

Sakui, K. (2007). Classroom management in Japanese EFL classrooms. JALT Journal29(1), 41-58.

JALT(全国語学教育学会)のHPから下記のURLよりダウンロードすることができます!
https://jalt-publications.org/jj/articles/619-classroom-management-japanese-efl-classrooms

Last Updated on 2023年2月5日

コメント

タイトルとURLをコピーしました