外国語学習者エンゲージメント-主体的学びを引き出す英語授業〜2023年年始に読んだ動機づけ研究3冊(3)〜

文献紹介

前々回と前回に引き続き、年始に読んだ動機づけの文献について紹介をしてきましたが、紹介は今回で最後です。

前回の投稿を見ていない人は此方から前回の投稿を確認することができます。

外国語学習者エンゲージメント-主体的学びを引き出す英語授業

今回紹介するのは『外国語学習者エンゲージメント-主体的学びを引き出す英語授業』です。原書は”Engaging Language Learners in Contemporary Classrooms”です。この本も前回の西田(2022)と同じくらいか、それ以上の情報量で、動機づけ研究についてこれでもか!というほど、ノックを打ってきました…

冗談はさておき、この文献はタイトルにもあるように「エンゲージメント」に焦点が当てられています。エンゲージメントとは次のように書かれていました。

ある活動に積極的に参加すること、あるいは特定の行動に関与することだ。学習者エンゲージメントといった場合には、学校に関連する活動や学業的な課題に対して、夢中になって取り組んでいる状態を意味する。(p. 12)(Sarah & Zoltán, 2020 鈴木・和田訳 2022)

この書籍では、これまでの動機づけ研究ではあまり議論されなかった、学習者の授業中の取り組みを含めた議論が行われています。そして、学習者のエンゲージメントを高めるための要因として、家庭環境から学校の文化、そして教員同士の関係、教員から生徒への接し方など、学校環境を取り巻くあらゆる面での提案が行われていました。動機づけと聞くと、指導法や題材など、授業中での取り組みに焦点を当てがちですが、確かに本書が指摘するように、家庭環境や学校の雰囲気など、教員の授業中での頑張りだけではない要因については見直してみてもいいかもしれません。

また、本書でも近年注目されている「成長マインドセット」についても言及され、それを育む方法として以下が紹介されていました(p. 55)。

  • 言葉を正しく使う(能力、間違い、才能、努力についての話し方を考える)
  • 間違いに対する学習者の考え方を変える(間違いを歓迎する)
  • 学習者の努力の的を絞る(目標と目的を持って努力させる)
  • 適切なフィードバックを与える
  • 自分が何をどう考えているのかを観察させる(学習者が言語学習にどのように取り組むべきか、また言語学習についてどのように考えているかについて話し合う)
  • 挑戦する文化を作る(挑戦はリスクではなく、成長のチャンスである)
  • 学習の成果ではなく、学習のプロセスにフォーカスする。

日々の実践でこれらを全て意識できているかと言うと、できていないものもあり、特に「挑戦する文化を作る」については、日本人の文化的な部分もあり、なかなか失敗を恐れず挑戦するマインドセットを育むのにはなかなか時間と労力がかかるかもしれませんが、成長マインドセットを身に付けさせるために少しずつ取り組む必要があると思います。

一方で、マインドセットの信念は「暗示的な性質が強く、必ずしも自覚されるものではないため、心に深く根付いたこの信念を変えるのは容易なことではない。(p. 68)」と言及されていました。学習者のマインドセットを成長マインドセットへ変化させることはもちろん理想的ですが、日々の授業実践や生徒指導の中でなかなか生徒を思うように導くことができないとよく思います(私自身の力不足のためですが)。

本書ではその手立てとして人間の脳には自らを変化させる性質(脳の可塑性)があることを伝えていくことができると述べられていました。英語の苦手な生徒や得意ではない生徒は、やっても仕方がないとか、自分には能力がないと思いがちですが、授業のドリルや活動通してこの可塑性について徐々に伝えていくことができるのではないかと思います。特に日本人は、ドリルや活動など段階的に練習することで自信や有能感を持ちやすい文化ではないかと考えます。マインドセットについてはまた今後どこかでまとめたいと思います。

まとめ

今回は、年始に読んだ動機づけの文献の最後の紹介として、エンゲージメントに関する書籍を紹介しました。生徒たちの授業でのエンゲージメントに向けて、まずは授業者として授業の中で、そして学校関係者として学校の中でできることについて考える機会を貰いました。昨今の教育での様々な課題は授業者だけではどうにも解決するには難しい問題ばかりです。学年や学校、そして保護者の方々がお互いに協力して取り組むことができれば、少しずつ変わっていくことができるのではないかと思いました。

次回はこれまで紹介した3冊を通して私が感じたことや考えたことについて話せればと思います。

皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.

引用文献

西田理恵子(2022)『動機づけ研究に基づく英語指導』大修館書店

Sarah, M., & Zoltán, D. (2020). Engaging Language Learners in Contemporary Classrooms. Cambridge: Cambridge University Press. (Sarah, M., & Zoltán, D. 鈴木章能・和田玲(訳)(2022)外国語学習者エンゲージメント-主体的学びを引き出す英語授業 アルク)

Last Updated on 2024年3月29日

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