Willingness to Communicate and Japanese High School English Learners

文献概要

今回紹介する文献は、Watanabe(2013)Willingness to Communicate and Japanese High School English Learnersです。

これまで日本のEFL(English as a Foreign Language)環境について扱ってきたので、日本の学習者が英語でのコミュニケーションに取り組もうとしているのかどうかについて調べた論文を選んでみました。日本の高校での調査であり、今後、英語でのコミュニケーション能力を学校現場で育成していかなければならない中で、学習者が英語でのコミュニケーションに対してどのように感じているかを知る参考になるかと思います。

皆さんの研究の役に立てたら幸いです。

初めに

現在、日本の英語教育では、生徒の英語コミュニケーション能力を育成するために様々な取り組みが行われている。

この研究では、学校生活を通して高校生のWillingness to Communicate(以下、WTC)がどのように変化するかを調査し、観察された変化や安定の原因について調べる。

文献レビュー

理論的背景

WTCは最初、第一言語でのコミュニケーションの実施の見込みとして概念化され、性格上の特徴として扱われ、主にコミュニケーションへの不安や自信、内向性や外向性、自尊心に影響を受けると考えれてきた。

その後、第二言語へも応用され、第二言語でのコミュニケーションの頻度を予想するものであり、特定の時間に特定の相手との第二言語での対話に参加する準備状態と定義され、場面の変数として扱われた。

実証研究

日本の英語学習者の英語のWTCについては、主にMcCroskeyのWTC尺度(McCroskey, 1992)を使って研究が行われている。

  • Hashimoto(2002):ハワイの日本人学生に調査を行い、自信と不安の軽減がWTCに繋がり、それがL2でのコミュニケーションの頻度に影響した。
  • Yashima(2002):日本人大学生の英語学習と英語でのコミュニケーション変数について調べ、動機づけが英語でのコミュニケーションの自信を高め、それがWTCに繋がった。また、国際的志向もWTCの上昇に繋がった(国際的志向:外国や古草的な事情への興味や、海外へ行くことやそこで働くことへの意欲、異文化を持つ人との対話への準備状態、異なる文化を受け入れるまたは自己民族中心にならない態度)。
  • Yashima, Zenuk-Nishide, and Shimizu(2004):日本での学習とアメリカでの留学プログラムに参加した日本の高校生の英語のWTCの条件と結果について調査を行い、自信と国際的志向がWTCと英語でのコミュニケーションに影響を与え、より高いWTCはより多くの英語でのコミュニケーションという結果になった。

動機づけの研究の一部として、英語でのWTC以外に、英語でのコミュニケーションに対する興味についても報告が行われている。

  • Kurahachi(1996):日本の大学生に対してどのように英語学習への動機づけが変化したかを調査した。参加者たちは徐々に熱意を失ってきたが、大学生とでは英語学習の必要性を感じ、話せるようになりたいと思っていることがわかった。
  • Nakata(2001):日本人大学生1年生の英語学習の動機づけの構成要素を調べ、彼らが感じた英語に対して文法的な難しさや受験英語への消極的な感情にもかかわらず、英語でのコミュニケーションへの興味を維持していることがわかった。

以上の先行研究からわかったこととしては、

  • 英語における学習者の認識する能力や自信、国際的志向、不安の軽減がWTCに繋がり、英語の使用頻度に影響を与える。
  • 過去の英語に対する消極的な経験や見方にもかかわらず、大学生は英語でのコミュニケーションへの興味を維持している。

目的と研究課題

この研究の目的は、日本人高校生の英語に対するWTCが高校生活を通して変化があるかどうかを調査し、その変化または安定の理由を調査することであるので以下のようにした:

  • 日本人高校生の英語のWTCは3年間で変化するのか。
  • 参加者はWTCの変化や安定をどのように感じ、その変化や安定の理由は何であるか。

研究方法

参加者

  • 190名の日本の高校1年生(3年間の中でアンケートの回答者数は、185→173→172となった)
  • 週に6〜7回、50分の英語の授業を受けている
  • 授業内容は、主にリーディング、ライティング、文法、口頭でのコミュニケーションである
  • 中学1年から高校1年まで週に1回ネイティブによる授業を受けている
  • 大学への入学に向けて学校の入学試験を経験しているので、学力レベルも英語力も国の平均を超えている

研究道具

  • アンケートは、Hashimoto(2002)と同一のものを用い、WTCについて19項目が設けられた(内7つについては分析は行われない)。
  • アンケートは毎年度頭から1ヶ月経った際に実施された。

予備のデータ分析

  • アンケートで収集した項目の妥当性を確認するために、ラッシュモデルでの分析を行った。
    • その結果、一次元性を確保したものとして、Willingness to Communicate with Friends and Acquiaintances(WTCFA)とWillingness to Communicate with Strangers(WTCS)が特定された。
  • クロンバックのアルファにて3つの期間で信頼性が確保された。

インタビュー

  • それぞれ3つのグループに分け、13名に対してインタビューを実施
    • Typical:アンケートのスコアが参加者平均であった者
    • Motivated:アンケートのスコアが参加者平均を大きく超えていた者
    • Returnee:事前に外国に住んでいたことのある者
  • インタビューは卒業する3ヶ月前に、日本語で実施された。
  • インタビューは、事前に決められた質問と、その質問への回答での追加の質問が聞かれた。
  • 6つのWTCに関わるテーマが見つけられた。

研究結果

生徒のWTCの変化

  • WTCFAとWTCSは3つの点を通して一定であり、WTCSは低いままであり、ANOVAでの分析も行ったが、有意差は見られなかった。

生徒の感想

  • インタビューより、WTCFAとWTCSは増加せず、WTCSは低いままでったのかについて以下が考えられる。
    • アンケート項目にある英語を話す環境での状況を想像するのが簡単ではなかったかもしれない
      • 英語でのコミュニケーションをあまり経験したことがない人にはその状況を想像するのは難しく、アンケートの項目があまり詳細を説明していないことも困難さを高めているかもしれない
    • 外国の人々への不安な感情が彼らと話したくないと思わせたかもしれない
      • 日本の学生にとって外国人と話す機会は限られ、不安に思ってしまうことは驚くべきことではないかもしれな。
    • 英語を使用することへの自信の不足により、英語でのコミュニケーションに取り組もうと思わなかったかもしれない
      • 生徒の動機づけが高かったとしても、使用する機会がなければ、英語を使用することへの自信は身につけることはできない
    • 生徒のWTCは彼らの現在の環境次第になりうる
      • 英語を話さない環境では、英語を話す環境との心理的な距離のためにWTCは低くなり、英語を話す環境ではアンケートでの場面が近く親しみやすいものになりうる
    • 多くの生徒が英語母語話者とのコミュニケーションがどのようなものか知らず、その重要性に気づいていないかもしれない
      • 海外での経験から英語母語話者とのコミュニケーションの重要性を感じることでWTCFAやWTCSが平均を超えるかもしれないが、海外での経験をしていない生徒はその重要性に気づかないかもしれない
    • 3年間を通してのWTCSが低かったことは、見知らぬ人へのコミュニケーションの日本人の態度の傾向を反映しているかもしれない
      • WTCFAと比べてWTCの平均が低かったことについて、日本人が見知らぬ人とのコミュニケーションを行うことが難しいことは無視できないだろう

研究討議と結論

  • WTCFAとWTCSは合理的に異なる
  • WTCFAもWTCSも3年間の中で有意差のある変化がなかった理由としては、
    • WTCを測る項目が参加者に適切でなかったかもしれない。
    • アンケートでの想像上の状況への反応と実際の行動は異なるかもしれず、アンケートで測られたWTCFAとWTCSは実際の行動を反映しないかもしれない。
    • 日頃の入試に向けた学習の中では、3年間でWTCFAとWTCSが変化しないのは驚くべきことではない。
    • 学習者が成長したいと思っていても、それがWTCFAとWTCSを上げることには繋がらなかった。
  • この研究からの示唆は、
    • 英語への自信のなさと英語を使用しない環境
    • 英語話者たちやコミュニケーションへの彼らの態度に関する知識がなければ、彼らに対して否定的な感情を持ち、コミュニケーションが阻害されるかもしれない

この文献を読んで

今回の論文では、日本人高校生の3年間のWTCの推移が調査されました。結果としては、WTCの変化は見ることはできませんでしたが、大学受験や日本人の性格など、日本EFL英語学習者WTCとその社会的・文化的背景を考える貴重な資料ではないかと考えます。

この文献に興味を持った人は是非「文献情報」から文献にアクセスしてみてください!

文献情報

Watanabe, M. (2013). Willingness to communicate and Japanese high school English learners. JALT Journal35(2), 153-172.

JALT(全国語学教育学会)のHPから下記のURLよりダウンロードすることができます!
https://jalt-publications.org/jj/articles/3435-willingness-communicate-and-japanese-high-school-english-learners

Last Updated on 2023年2月5日

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