第二言語学習の心理 個人差研究からのアプローチ〜2023年年始に読んだ動機づけ研究3冊(1)〜

文献紹介

先日の投稿の今年の目標でも話しましたが、年始は動機づけ研究の文献を何冊か読んでいました。それらの文献を読もうと思ったきっかけは、現在、動機づけについてしばらく研究を進めており(進めたり休んだりですが)、自分の研究を次の段階へ進めるためのアイディアを模索していました。特に、第二言語習得での不安やマインドセットについては、1度整理して勉強したかかったため、以前から読みたかったものや目次を見て関連がありそうなものとして3冊を選びました。今日からの投稿では、それらを読む中で感じたなどについて話せたらと思います。

第二言語学習の心理 個人差研究からのアプローチ(福田ほか, 2022)

この文献は他の動機づけ研究の書籍とは異なり、それぞれの個人差研究ごとにこれまでの研究内容がまとめられています。目次としては、ワーキングメモリ、言語適正、ビリーフ、第二言語不安、動機づけ、アイデンティティです。この書籍は主に日本語教育に焦点を当てて書かれてはいますが、内容としては外国語教育全般的にも述べられてあり、個人差要因について大変勉強になりました。

この本を読もうと思ったのは、目次にある第二言語不安研究について1度全体像を学びたかったです。断片的にはこれまの論文で学んできましたが、この本では第二言語不安について初期の研究から最新の研究までわかりやすくまとめられており、Horwitz et al. (1986)で言われている第二言語不安の構成概念である、コミュニケーション不安やテスト不安、否定的な評価に対する不安についてHorwitz et al. (1986)以降にどのような研究が行われてきたか紹介されており、今後の研究の参考になりました。

それ以外にも自分の中で興味深かったものとしては、ワーキングメモリとビリーフについてでした。ワーキングメモリについては、インプットからアウトプットまでの言語習得の流れの中でワーキングメモリがどのように関わっているかや、活動を行う前のプランニングはワーキングメモリの観点からも有効であるなど、意外と指導の中で意識できていない部分もあり、参考になる内容が多かったです。ビリーフについては、最近の私の関心でもあるマインドセットが取り上げられ、マインドセットがビリーフ研究の中に位置付けられるのかと学び、今後の研究分野であることから、自分もこれについて掘り下げていきたいと思いました。

まとめ

今回はこの年始に読んだ動機づけ研究の書籍の1冊目を紹介しました。内容としてはどの分野も本当に興味深く、それぞれの分野について研究を行うことができればと思うばかりです。是非、目次で興味を持った分野だけでも読んでみてください。

また、マインドセットについては、今年のJALT(全国語学教育学会)の研究大会のテーマでもあるので、今年の間に勉強してみたいと思います。

JALT2024 - Moving JALT into the Future: Opportunity, Diversity, and Excellence | NPO The Japan Association for Language Teaching (JALT)

次回は2023年年始に読んだ動機づけ研究2冊目について紹介します。

皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.

引用文献

福田倫子・小林明子・奥野由紀子・阿部新・岩崎典子・向山陽子(2022)『第二言語学習の心理 個人差研究からのアプローチ』くろしお出版

Horwitz, E. K., Horwitz, M. B., & Cope, J. (1986). Foreign language classroom anxiety. The Modern Language Journal70, 125-132.

Last Updated on 2024年3月29日

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