3冊を読んで感じたこと〜2023年年始に読んだ動機づけ研究3冊(4)〜

文献紹介

今月は年始に読んだ動機づけの文献について紹介をしてきましたが、今回はそれら3冊を読んだ感じたことを書こうと思います。

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3冊を読んで感じたこと

この年始に動機づけの勉強のためにこの3冊を読みましたが、学習者の動機づけを高めるための研究や実践の示唆がたくさんありました。特に自己決定理論での内発的動機づけを学習者に持たせるための条件である、自律性の欲求、有能性の欲求、関係性の欲求が動機づけにおいてのキーワードのように感じました。特に有能性の欲求については現在研究しているWTC(Willingness to Communicate)でもこの有能性または有能感は影響を与えると言われており、中高の現場で働く身として成功体験が少ない生徒や将来への展望を持ちにくい生徒の動機づけを高めるために、有能性の欲求は重要であると考えています。また、教育者として、どうしても授業中に焦点を当てて考えがちですが、Sarah & Zoltán (2020 鈴木・和田訳 2022)が指摘するように、急激に変化し続ける社会の中での家庭環境や学校の組織文化などの教室外の要因についても焦点を当てていく必要があるかもしれません。

この3つの書籍の中では、日本での動機づけを高める具体的な英語指導の提案として、西田(2022)ではCLILやEMIの紹介されていました。CLILなどの意味に焦点を当てたcommunicative approachは自己決定理論の研究で示唆している内容と一致しているように感じますが、あくまで自律性の欲求、有能性の欲求、関係性の欲求の3点が内発的動機づけを身につける上で重要であるということなので、communicative approachを採用することが必ずしも日本のEFL(English as a Foreign Language)環境での指導においてベストというわけではないかと思います。普段から英語を使用することがない日本のEFL環境では、特に中高の現場では国際系に特化しない限りは、学習者は全員が海外や英語への関心は持つわけではないかと思います。もちろんcommunicative approachに対して完全に反対というわけではありません。指導計画の中で、従来の指導では時間や他の様々な要因のために教師からの一方的な説明や活動することなく練習ばかりになってしまい、英語でのコミュニケーション能力を身につけさせていくためには、CLILなどのコミュニケーション活動自体は取り入れていく必要はあると思います。ただ、授業デザインとして、まずは明示的に教え、練習させることで、有能性の欲求への影響を与えることもできるのではないかと思います。また、自律性や関係性についても、練習活動の目的や意図をしっかりと共有したり、場合によっては活動を選ばせることや、ペアやグループワークでの工夫など、内発的動機づけを身につけるために、従来の指導でも改善の余地はまだあるかと思います。ただ、私自身がそういった欲求に十分に注意できているかと思うと、まだまだな部分も多いので、今後の指導にまずは取り入れていきたいと思います。

最後に、福田ほか(2022)でまとめられていた第二言語不安については、Horwitz et al. (1986)で言われている、コミュニケーション不安やテスト不安、否定的な評価に対する不安については日本のEFL環境の中高の学習者についてはまだあまり掘り下げられていないように感じます。先ほどの内発的動機づけを高めるための取り組みを行う一方で、学習者がどういう場面で不安を感じるか、なぜそのように不安を感じるようになったのかについて、特に否定的な評価に対する不安を中心に今後調査できればと思います。

まとめ

今回は、年始に読んだ動機づけの文献の紹介と、それらを読んで感じたことについて紹介しました。どの書籍もそれぞれの切り口で動機づけ研究について整理してくれており、大変勉強になります。1回読んだだけでは処理しきれていないので、折に触れて動機づけ研究の確認の際の資料として復習したいと思います。

今年も動機づけについて何か発表や論文で自分なりにまとめることができないかと思うばかりです。また書籍以外にも論文等で興味深いものがあれば紹介します。

皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.

引用文献

福田倫子・小林明子・奥野由紀子・阿部新・岩崎典子・向山陽子(2022)『第二言語学習の心理 個人差研究からのアプローチ』くろしお出版.

西田理恵子(2022)『動機づけ研究に基づく英語指導』大修館書店.

Sarah, M., & Zoltán, D. (2020). Engaging Language Learners in Contemporary Classrooms. Cambridge: Cambridge University Press. (Sarah, M., & Zoltán, D. 鈴木章能・和田玲(訳)(2022). 外国語学習者エンゲージメント-主体的学びを引き出す英語授業 アルク)

Last Updated on 2024年3月29日

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