定期試験と実力テスト

評価

先日、教員同士の話の中で、こんな発言を聞きました。「実力テストで点数を取れるように、定期試験も実力テストの内容を含めている。」これは指導として果たして適切でしょうか。学校で実施されるテストとして、呼び方は学校によって様々であると思いますが、定期試験と実力テストがあります。それらはどのような性質なのでしょうか。

今日の投稿では、定期試験と実力テストの違いとそれぞれの役割について考えたいと思います。

定期試験とは?

まず、定期試験とはどういったテストでしょうか。2学期制や3学期制を導入している学校によって呼び方が変わることもあるかと思いますが、各学期の中間時点までに学んだ内容を基に出題される中間試験と、それ以降またはその学期全体で学んだ内容を基に出題される期末試験があります。このように、ある期間において生徒の学習内容がどれだけ身につけたかを評価するテストを到達度テスト(achievement test)と呼び、定期試験はこれに当たります。

生徒の成績の算出だけではなく、到達度テストについて、教師の振り返りの視点で笠原・佐藤(2017)は以下のように述べています。

定期考査では授業で教えた内容が問われることになるので、教師にとっては、授業の効果や具体的教授内容・教授法の質を振り返る機会にもなります。期待したほど生徒が点数を取れなかったのは、そもそも教師の教え方に問題があったのかもしれないと考えることができ、作成したテストが良くなかったということも分かるということです。(pp.14-15)

到達度テストでは、生徒がどれだけ学習した内容を身につけたかを測るものであるので、その課で生徒全員が身につけるべきものを身につけることができていれば、平均が100点というのはあっても責められることはないと思います。逆に、平均点が低いというのは笠原・佐藤(2017)が言うように、教師自身がきちんと身につけさせることができていない、またはテスト自体が良くないものなのだろうと思います。

実力テストとは?

先ほどの到達度テストに対して、実力テストなどの生徒のその時点での能力を測るテストを熟達度テスト(proficiency test)と呼びます。他にも、熟達度テストの例としては、英検、TOEIC、TOEFLなどが挙げられます。熟達度テストはそれぞれのテストにおいて受験者がどれだけの語彙や表現、運用能力を持っているかを提供するものです。

定期試験と実力テストの違い

定期試験と実力テストについて、到達度テストと熟達度テストに置き換えて話をしてきました。それぞれの違いについては、実力テストは一定期間の学習でどれだけ身につけたかを測る到達度テストであり、実力テストはその時点で特定の能力をどれだけ身につけているかを測る熟達度テストです。

しかし、この違いについては綺麗に分けることができない場合もあるかと思います。実力テストとはいっても学校で実施されるようなものや大学入試や高校入試の模擬試験は、範囲が決まっているわけですから、今まで学習した中でそれまでの範囲をどれだけ習得・保持することができているかという点では、到達度テストにもなり得ますし、定期試験もその課で学習したものを基に発展的な問題の出題をすれば(発展的内容の出題の賛否はさておき)、ある意味では熟達度テストにもなり得ます。

しかし、私個人的には、学校で実施される定期試験は基本的には到達度テストであるべきと考えています。まずは日々の授業をしっかりと頑張っている生徒がテストでしっかりと点数を取ることができるように指導しておくべきであり、発展的な内容を入れ過ぎれば、塾などでそのような内容に取り組んでいる一部の生徒だけが点数を取ることができ、また、授業内容以上のことがテストに出れば、「授業内容を聞いてもテストには出ない」というような生徒の日々の授業の取り組みに負の波及効果(washback effect)を与えてしまいかねないです。もし実力テストに対応できるように、発展的な内容を含めたいのであれば、授業デザインの時点でそのような発展的な内容を含めて授業計画を立て、生徒がそういった問題に取り組むことができるように授業の中で指導すべきと考えます。

まとめ

今回は定期試験と実力テストの違いについて考えました。

定期試験は、ある一定の期間の中での学習内容をどれだけ身につけたかを測る、到達度テスト(achievement test)であり、実力テストは、その時点である内容についての習熟度を測る、熟達度テスト(proficiency test)です。

両者に違いはあるものの、テストの趣旨や内容によっては、両方を兼ねる場合もあります。しかし、学校教育の定期試験は基本的には到達度テスト(achievement test)であるべきと考えます。

皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.

引用文献

佐藤・笠原. (2017). 英語テスト作成入門 効果的なテストで授業を変える!. 金星堂.

Last Updated on 2024年3月29日

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