動機づけ研究に基づく英語指導〜2023年年始に読んだ動機づけ研究3冊(2)〜

文献紹介

前回に引き続き、年始に読んだ文献について紹介をします。文献のジャンルは前回に引き続き、動機づけです。

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動機づけ研究に基づく英語指導

前回の福田ほか(2022)と同様に、この文献もかなりの情報量で、1つの箇所を理解できるまででもかなり時間を要しました。この文献もこれまでの動機づけ研究についてまとめられており、福田ほか(2022)が分野ごとの整理に対して、此方は時系列での整理でした。本の編成としては、理論編として動機づけの時系列の整理の後に、その理論を基にした実践が紹介されていました。Garnderの社会教育モデルから始まり、日本の環境での国際的志向、帰属理論、自己システム論など、様々な動機づけの理論が紹介されている中で、自己決定理論(Deci & Ryan, 2002)の内発的動機づけをどのように身につけさせるかを著者の先生は大事にされているような印象を受けました。

自己決定理論については、前回紹介した福田ほか(2022)において以下のようにまとめられています。

自己決定理論は、動機づけを無動機(amotiovation)、外発的動機づけ(extrinsic motivation)、内発的動機づけ(intrinsic motivation)に分類し、段階的な発達を捉えようとするものであり、3つの心理的欲求(自律性の欲求、有能性の欲求、関係性の欲求)を充足することにより動機づけが高まるとされる(Deci & Ryan, 2002)。

福田倫子・小林明子・奥野由紀子・阿部新・岩崎典子・向山陽子(2022)『第二言語学習の心理 個人差研究からのアプローチ』くろしお出版

内発的動機づけと外発的動機づけについては、八島(2019)を引用して、以下のように説明されていました。

内発的動機づけ:それをすること自体が目的で何かをすること、それをすること自体から喜びや満足感が得られるような行動に関連した動機(p. 91)

外発的動機づけ:金銭的な報酬や他のものに認めらていることなど、何らかの具体的な目的を達成する種だとして行う行動に関連した動機(p. 91)

以上の内発的動機づけに関わるこれまでの先行研究から示唆されてきた内容として、学習者に選択の自由を与えること、自分で意思決定をすることができる環境、そして楽しんでその活動に取り組むことが内発的動機づけの育成につながる可能性があることが報告されていました。これらは普段の授業の中でも大事しないといけないこととわかってはいるものの、私自身は授業の中で十分意識はできていなかったと思います。

そして、後半では、それまでに紹介された動機づけ研究からの示唆を基にした実践としてCLIL(Content and Language Integrated Learning)やEMI(English as Medium Instructions)が紹介されていました。CLILとEMIについてのそれぞれの説明はここでは省きますが、CLILについてはその骨組みある4つのCが内発的動機づけを高める3つの心理的欲求(自律性の欲求、有能性の欲求、関係性の欲求)と整合性があるように感じ、動機づけを高める指導法としてすごくわかりやすかったです。

まとめ

今回は、年始に読んだ動機づけの2本目の文献の紹介をしました。今回の文献は、これまでの動機づけ研究でわかっていることを基に、実践の中でどのように動機づけを高めることができるかを具体的に紹介してくれていました。紹介した中の3つの心理的欲求(自律性の欲求、有能性の欲求、関係性の欲求)は今後の授業の中で今後意識していきたい内容であり、特に有能性については、授業の実践1つ1つの中で、学習者ができたと思えるようにすることがこの3つの中でも1番大事なように感じます。

次回は、年始に読んだ動機づけの3本目の文献の紹介をします。

皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.

引用文献

西田理恵子(2022)『動機づけ研究に基づく英語指導』大修館書店

福田倫子・小林明子・奥野由紀子・阿部新・岩崎典子・向山陽子(2022)『第二言語学習の心理 個人差研究からのアプローチ』くろしお出版

八島智子(2019)『外国語学習とコミュニケーションの心理:研究と教育の視点』関西大学出版部

Deci, E. L., & Ryan, R. M. (Eds.). (2004). Handbook of self-determination research. University Rochester Press.

Last Updated on 2024年3月29日

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