いよいよ1月が明日で終わってしまいますね。毎日寒い日が続きますが,皆さんいかがお過ごしでしょうか。今週からは国公立大学受験に向けての講座が始まり,久々の授業でしたが,やはり授業は楽しいですね。受けてくれている生徒たちの力に少しでもなるように,1回1回を頑張りたいと思います。
さて,今回からの投稿では,この3年間大学受験に向けての指導をしていく中で,コミュニケーション重視という流れについて感じたこと,考えたことを書いていきたいと思います。初回の今回は外国語教育そして日本の英語教育においてどのようにコミュニケーションに焦点を当てられ始めたかについて紹介できればと思います。
コミュニケーション重視の始まり
そもそもいつからコミュニケーションに焦点が当てられ,外国語教育の中で使われるようになったのかは,指導法の歴史の中で見るのがわかりやすいと思います。最初はラテン語の文章を読んで,知能を高めていくために,「文法訳読式」で知られるGrammar-Translation Method(GTM)が用いられ,その後実際に会話のための外国語能力を身につけるために,Direct MethodやAudio-lingual Methodが考案されましたが,ルールを身につけるだけでは適切に意識疎通ができるようにならないから,Communicative Language Teaching(CLT)が出てきました。その後,そのCLTの理念を基に,Task-Based Language Teaching(TBLT)やContent Language Integrated Learning(CLIL)などの指導法が考案されました。
日本の英語教育においては平成元年版の学習指導要領において「コミュニケーション」という言葉が明文化され,その後高等学校では「オーラルコミュニケーション」や「英語コミュニケーション」のように科目名にもコミュニケーションが書かれるように,それまでの受験のための文法訳読や詰め込み教育から,さらなる英語運用能力の向上を目指し,グローバル社会の中で多様な文化を背景に持つ人々とのコミュニケーションのための英語教育が検討されてきました。その後,CLTが取り上げられるようになり,TBLTやCLILが取り入れられるようになってきました。昨今においても学習指導要領に記載されているように,教室を英語でのコミュニケーションのための場面として設定するために言語活動の充実が提案され,各学校でコミュニケーション活動が積極的に扱われることが期待されています。
日本の英語学習環境
コミュニケーション能力の育成は重要である一方で,CLTの導入に当たっては,日本の英語学習環境について考える必要があるかと思います。日本において英語は,アメリカやイギリスのようにその国で話されている環境(English as a Second Language; ESL)ではなく,普段の生活で使用されることのない環境(English as a Foreign Language; EFL)です。普段の生活で使用することがないということは,それにより日々英語に触れる量はESL環境と比べると圧倒的に少なく,英語でのコミュニケーションが必要と感じることはなかなか難しいでしょう。そんな中,高校入試や大学受験などで重視され,主に学校の1つの教科として,日々毎日の小テストや定期試験などのために英語を学んでいる学習者がほとんどでしょう。こんな状況で,コミュニケーションと言われても多くの生徒がそれどこではないかと思います。そして,受験のために取り組んでいる生徒にとって中途半端なコミュニケーション活動をしてしまえば,帰って生徒たちのモチベーションを下げてしまうこともあるでしょう。
また,西洋においてどのようにCLTが導入されたかについても知っておく必要があるかと思います。西洋でのCLTの発端は,それまでのDirect MethodやAudio-Lingual Methodを通して,言語の文法を身につけたとしても,適切な場面で使用できないことからでした。この状況について,Larsen-Freeman & Anderson(2011)ではこのように述べられています。
Being able to communicate needs more than mastering structures, due to the fact that language was fundamentally social (Halliday, 1973).
Within a social context, language users needed to perform certain functions, such as promising, inviting, and declining invitations (Wilkins, 1976).
Students may know the rules of linguistic usage, but be unable to use the language (Widdowson, 1978).
これらの反省からCLTが考えられたのは理解できますが,日本においては,英語の文法が十分に身につけているという状況と判断することはなかなか難しいのではないかと思います。また,十分だとしてもESL環境での文法習熟度とEFL環境でのそれでは,かなり差があるのではないでしょうか。その西洋のレベルにも達していないとするならば,日本の英語教育においてはコミュニケーションを重視することも念頭に置きながらも,まずはしっかりと身につけさせることが前提に置かれなければならないかと思います。
まとめ
今回は,コミュニケーションが重視される日本の英語教育において,コミュニケーションが外国語教育や日本の英語教育においてどのように焦点を当てられたか,そして日本の学習環境について概観しました。CLTの理念を取り入れるに当たっては,その背景と日本の学習環境を理解しておく必要があるかと思います。次回は,CLTによる教師の指導観への影響について書くことができればと思います。
皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.
参考文献
Larsen-Freeman, D., & Anderson, M. (2011). Techniques and principles in language teaching 3rd edition-Oxford handbooks for language teachers. Oxford university press.
Last Updated on 2026年2月2日



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