単元によって授業を変えませんか?〜TANABU Modelその7〜

TANABU Model

いよいよ3月に入りました(本当にあっという間ですね…)。日中は暖かい日も出てきて,春もすぐそこと思いたいですが,寒い日はもう少し続きそうですね。学校によっては今年度最後の期末試験も終わり,年度納めに向けて進んでいる頃でしょうか。私も定期試験が終わり成績処理をしつつ,修学旅行も控え,残りの授業はもちろんのこと,次年度以降に向けて準備を進めているところです。皆様は次年度に向けて新たな野望や計画など,いろいろとお考えでしょうか。

さて,前回の投稿でTANABU Modelの超こってりコースのパフォーマンステスト本番の様子について紹介しました。

今回の投稿では,今年1年間TANABU Modelを実施してみて気づいたことについて紹介していきたいと思います。

前回の投稿は此方から。

TANABU Modelについては此方の書籍でご確認ください。

TANABU Modelを通して気づいたこと

今年度1年間TANABU Modelを実施してきました。実際には担当者で相談しながら探り探りの中での挑戦だったため,4つのコースのうち基本となるこってりコースが中心でしたが,最後の学期に超こってりコースを1レッスンだけ実施することができました。もちろん全てが順調ではなく,TANABU Modelの理念や狙いについての担当者間での共有が不十分であったことや,実際に生徒に実施してみて活動の調整を強いられることもありました。そんな中で1年間実施してみて,TANABU Modelについて考えたことや感じたこと,気づいたことを紹介したいと思います。

担当者間の授業共有

まず,今回の授業を通して考えたこととしては担当者間での授業内容についての共有の重要性です。TANABU Modelではワークシートを中心に授業を展開するため,授業ごとでどのワークシートを使えばいいかが決められています。そのため,お互いに手順に慣れるまでは時間がかかりますが,慣れてしまえば担当者間での授業展開の共有がしやすかったです。

一方で,それぞれのワークシートの内容や意図については,共有のためにしっかりと時間をかける必要があります。例えば,教科書の概要理解のためのparagraph chartについては,構成や内容が作成者次第で変わってくるかもしれませんし,詳細理解のためのcomprehension check sheetでは質問内容が,vocabulary scanning sheetで扱う表現をどこで区切るのかなどが担当者によって変わってくるでしょう。ワークシートのテンプレートが決まっているからこそ,その分ワークシート作成のための話し合いについては複数の担当者で実施する場合には時間をかける必要があるかと思います。

教科書の利活用

次にTANABU Modelを利用して気づいた点は,教科書の利活用です。TANABU Modelの授業の中で,ワークシートを用いて様々な活動に取り組む中で,生徒たちが教科書の表現に繰り返し触れ,その表現が本文の内容を踏まえながら少しずつ定着していくのを感じました。こってりコースではretelling活動で教科書の表現が定着し,生徒によっては結果的にreproduction活動になってしまうほどでした。また,超こってりコースのパフォーマンステストであるインタビュー活動では,ある程度制限のある活動ではありながらも,繰り返し触れた表現をリサイクルし,完全には遠いかもしれませんが自分の言葉のように言うことができる生徒も多かったです。

また,教科書を毎回ちゃんと用意させたことで,別のパートや別の単元の再利用もすることができました。今までは毎回のワークシートに教科書の英文も載せていましたが,毎回教科書を持ってくるようにすることで,その単元のその単元の別のパートを再度確認させ,それまでの話の流れや表現の確認はもちろんですが,別の単元においても学習したものと同じような表現を探すなどの活動を行うことができました。将来的には,論理表現の授業でも持ち込んで文法表現探しをさせることもできるかもしれません。

副教材の見直し

最後に,副教材の見直しです。教科書を繰り返し使うことで,英語を十分に身につけることができるのではないかと思いました。中高両方にて年々教科書で扱われる語彙の量が多くなり,教科書のボリュームも大きくなっています。そのためそこに追加して副教材を扱うことはどれだけ有効でしょうか。副教材を導入することで副教材とは本来的には教科書の足りない部分を「補う」ためのものであったかと思いますが,教科書があれほどのものになってきた中,副教材は本当に必要なのか考える必要があると思います。教科書で扱われる語彙もあり,さらに別で副教材でも扱われる語彙があれば,生徒たちは実質,それぞれで一期一会の語彙に出会うことになります。それよりむしろ,教科書を繰り返してあげる中で,何度もその表現に出会い,アウトプットできる状態まで持っていく方が良いのではないかと思います。

まとめ

今回はTANABU Modelを実施して考えたことについて紹介しました。

TANABU Modelを通して,教科書をさまざまな角度で活用することで,その利便性について考えることができました。教科書が扱う語彙や表現が多くなる中,色々な教材を使って「量」を流し込む前に,まずは日々の授業の「質」を高める必要にあるのではないかと思います。

TANABU Modelについては次年度以降も引き続き挑戦していこうと思いますので,今後も区切りごとにまとめていこうと思います。

皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.

参考文献

金谷憲・堤孝 (2017).『レッスンごとに教科書の扱いを変えるTANABU Modelとは―アウトプットの時間を生み出す高校英語授業』アルク出版.

Last Updated on 2025年3月1日

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