新学期が始まり,少しが経ちましたが,普段の調子は戻ってきましたでしょうか。
私は,年末年始はそこそこに休んでいるつもりでしたが,補習や旅行などで気疲れもあったせいか,体の調子があまり良くないスタートとなってしまいました。今週は連休もあったので,少しずつリズムも戻ってきましたので,今学期も頑張っていこうと思います。
さて,皆さんは教科書の授業をどのようにされていますでしょうか。どの教科書も基本的に10のメインとなる章があり,それらを中心に年間の授業を進めているかと思いますが,毎回の章を同じような流れで進めたり,教科書に書かれている活動を全て終えたり,他の業務の忙しさもあり,あまり教科書の単元ごとにじっくりとどのように進めるか考えることができないこともあるのではないかと思います。もし単元によって展開を変えたいと考えている人がいれば,TANABU Modelという指導モデルがヒントになるかもしれません。
今回の投稿では,昨年より取り組んでいるそのTANABU Modelについて紹介しようと思います。
なお,今回のTANABU Modelの説明については此方の書籍を基にしています。詳細については此方をご確認ください。
導入の経緯
TANABU Modelがどういったものかの説明の前に導入の経緯を話したいと思います。TANABU Modelは昨年,2024年の4月の高校2年時より実施しましたが,導入のきっかけはそのさらに1年前に遡ります。当時の高校1年生の段階では,同じコースの4クラスを別々の4人で担当する必要があり,教科書を進めるにあたって,同じワークシートを使っていたものの,それほど統一して指導を行うことはできませんでした。また,教科書は色々な分野についての内容が扱われているので,その内容によって指導を変えて何か取り組むことができないかと模索しているところでした。そんな時に,何か具体的な指導モデルを考えていたところ,以前に取り入れていたTANABU Modelを思い出しました。
TANABU Modelとは?
TANABU Modelは,青森県の田名部高等学校の先生方によって開発され,検定教科書に基づいて授業を行い,アウトプット活動を通して英語の基礎基本を身につけるという授業をモデルです。この指導法の特徴としては,教科書の単元によって指導計画を変えるという点です。具体的には,TANABU Modelは,超こってり,こってり,あっさり,超あっさりの4つのコースに分かれ,授業者は教科書の単元によって,この4つの中からコースを選び,授業を実施します。また,もう1つの特徴として,授業は主にワークシートを使用して進められます。詳細は後で紹介しますが,それぞれのコースによってワークシートがあり,同じ学年の担当者が複数であっても,ワークシートを基に授業を行うことで,ある程度統一して授業を行うことができます。
コース | 指導内容 | 必要時数 |
---|---|---|
超こってり | 1. Overview Understanding, Detail Understanding 2. Vocabulary and Expressions Practice, Reading-aloud Activities 3. Performance Test | 15 |
こってり | 1. Overview Understanding, Detail Understanding 2. Vocabulary and Expressions Practice, Reading-aloud Activities 3. Dictation, Retelling | 12 |
あっさり | 1. Overview Understanding (Listening) 2. Vocabulary and Expressions Practice | 4 |
超あっさり | 1. Reading Test 2. Vocabulary and Expressions Practice | 2 |
4つのコース
次に,それぞれのコースの特徴について紹介しようと思います。なお,ここでの教科書の単元は4パートに分かれているものとします。
超こってりコース
超こってりコースは,教科書の1パートに対して,2時間を使用します。1時間目では,大まかな理解から細部の理解へ移り,2時間目はそのパートの語彙や表現を確認し音読を通してその表現の定着を図ります。8時間でその流れを全てのパートで行うことで,単元の内容を理解した後に,Performance testとして,残りの7時間を利用してコミュニケーション活動を行います。
コミュニケーション活動の例としては,ある人物の伝記についての単元だった場合は,トークショーとして2名の生徒がそれぞれ学習した人物役とインタビュアー役に分かれ,片方がその人物について質問して,もう片方がそれに答えていくというものがあります。それまでの時間で身につけた教科書の表現を使って,設定された場面で使用するということで,実際のコミュニケーションに近い状況で英語でのやり取りを行うことができる一方で,準備時間も多く必要となり,このTANABUで1番多い授業時数となります。
こってりコース
続いて,こってりコースは,基本的には超こってりコースと流れは同様で,1時間目では,大まかな理解から細部の理解へ移り,2時間目ではそのパートの語彙や表現を確認し音読を通してその表現の定着を図ります。違いとしては,3時間目でDictationとRetellingを通して更なる定着を図るという点です。このコースの利点としては,毎回のパートを3時間かけて行うことで,各パートの定着をじっくりと行うことができる点です。2時間目でしっかりと音読を行い,その定着を3時間目のDictationで試し,Retellingで実際のアウトプットすることで言いたいことと実際に言えることのギャップに気づき,さらに定着を図ることができます。
あっさりコース
あっさりコースでは,超こってりコースやこってりコースとは異なり,大まかな理解で終える流れになります。各単元のそれぞれのパートごとを扱うのは変わりませんが,1時間の中でそれぞれのパートをリスニングを通して理解の確認を行い,そして語彙や表現の確認を行う流れです。
超あっさりコース
超あっさりコースでは,あっさりコースよりさらに短く,1時間目にReading testとしてその単元の全てのパートを繋げた単元全体の英文を読み,理解度確認問題に取り組むというものです。そして,2時間目にその英文の語彙や表現を確認してその単元を終えます。
まとめ
今回は,TANABU Model導入の経緯とその概要について紹介しました。
単語も内容も年々難易度が上がっていく教科書を,その単元によって重みづけを変えながら進めていくことで,授業者にとっても学習者にとってもマンネリすることなく新鮮な気持ちで教科書に取り組むことができるのではないかと思います。また,授業者の守備範囲も活かすことができる単元については,最新の情報や他の持ち込み教材など,発展的な活動も取り入れやすいかと思います(授業者の趣味に走りすぎて,学習者を置いてきぼりにならないように気をつける必要がありますが)。一方で,デメリットとして,生徒がじっくりと読んでみたいと思った単元が簡単に終わってしまうということもあるかと思うので年間計画の作成には注意が必要です。
次回は,実際に運用したこってりコースについて,ワークシートを交えて紹介しようと思います。
皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.
参考文献
金谷憲・堤孝 (2017).『レッスンごとに教科書の扱いを変えるTANABU Modelとは―アウトプットの時間を生み出す高校英語授業』アルク出版.
Last Updated on 2025年1月19日
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