日本のEFL環境での英語指導とは?:佐藤臨太郎先生を迎えて

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2月後半にかけてセミナーなどに色々参加してまとめるのに時間がかかっていましたが、やっとまとめることができました。

先日、なんと奈良教育大学の佐藤臨太郎先生を勤務先に講師としてお迎えし、「日本のEFL環境における英語指導について」という演題で、ご講演をして頂きました。

ご講演の経緯としては、近年、学習指導要領が4技能でのコミュニケーションをより意識したものとなる中、昨今の日本の英語教育では、様々な情報が飛び交う混沌とした中で、日本の英語学習環境の中でどのような英語指導が必要であるかを考える機会を設けるために、日本のEFL(外国語としての英語)環境における英語学習や指導に関してワークショップや講演をされ、日頃より日本の学校現場での日本人の英語習得について研究を行われている佐藤臨太郎先生に講師を依頼しました。

今回は、講演の内容とそこで考えたことについて共有します。

佐藤臨太郎先生については此方をご覧ください↓↓

佐藤 臨太郎 (Rintaro Sato) - マイポータル - researchmap
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講演の内容

今回のご講演では、主に日本のEFL環境での文法指導についてお話頂きました。まず、前半では、学習指導要領を概観し、日本の英語教育がCLT(Communicative Language Teaching)を意識したコミュニケーションをより重視したものへ移行しようとしている点から、これまでの文法訳読式やPPP(Presentation-Practice-Production)を中心とした指導の利点と不利点を考え、その後、CLTの原理や利点などについて解説がありました。その後、一見CLTが目指す指導は理想ではあるものの、それを踏まえた上で、日本のEFL環境が受験志向であることや英語の日常での使用状況、学校の環境などの観点からどのような指導を行うべきかお話がありました。

後半では、日本のEFL環境での指導法として、改訂版PPPが提案されました。改訂版PPPは、従来のPPPの弱点であったインプットやコミュニケーション活動の不足を踏まえて提案されたものです。最初のPでは、教師によるsmall talkにより、学習項目を含んだ、内容のある潤沢なインプットを学習者に与え、その後その学習事項について説明を行い、次のPでは、従来の機械的なドリルだけではなくコミュニケーションの側面も増やすものの学習項目を使用を設定する意味のあるドリルに取り組ませ、最後のPでは、学習項目を設定しない、コミュニケーションに焦点を当てた活動に取り組ませます。ただ、あくまで最後のPが最終ゴールであり、最初の2つのPがその過程でしかないことが強調されました。講演中は、実際に参加者でsmall talkに取り組んでみて、どのように実施すればいいか検討が行われました。

改訂版PPPについての詳細については此方をご覧ください↓↓

日本のEFL環境での英語指導とは?

今回の佐藤先生のお話では、今の様々な情報が飛び交う日本の英語教育で、我々教師が忘れてはならない日本の英語指導・学習環境について改めて考えることができました。英語ができることで世界が広がることはもちろんなのですが、日本においてそれを実感できるほど英語が使用されていなければ、日常生活を過ごすために使用する必要もありません。そんな中でどれだけ英語がこれから必要と言われても、学習者にとっては納得が難しく、あくまで受験科目の1つでしかないことがほとんどでしょう。私のクラスでも英語に興味を持っている生徒もいる一方で、ほとんどができたらいいけどあくまで今は教科の1つと考えている生徒の方が多いです(私の日頃の指導が悪い点も大いにあるかと思いますが)。だからこそ、その日本の実情を踏まえた上で、流行りにただ単に乗っかることなく、目の前の生徒の英語力を着実に向上するためにどう指導するべきかを教師が考えていく必要があると改めて感じました。

また、改訂版PPPのお話では、やはり教師自身の英語力が重要であるということを感じました。参加者でsmall talkに取り組んだ際に、理想的なsmall talkとして、前時の学習内容を含んでいることやその課で学ぶ内容を含んでいること、教科書のその単元と関連していることなどの条件がありましたが、それを取り入れた上で、一方的のものではなく、生徒とのインタラクションをしながらというのは、教師自身に英語力がかなり求められると思います。実際に参加者の前でもやりました(やらされた?)が、含めることにいっぱいになり、それ以外の点で色々とご指摘を頂きました(汗)。

また、PPPにおいて最初のPPがあくまで通過点であり、最後のPの機会を確保しなければならない点については本当に反省ばかりです。最後のPの際にいつも悩むのはどのようなコミュニケーション活動を設定するべきなのかにいつも悩みます。その課の学習内容を設定しないが、それを使った方が効果的なコミュニケーションはどのようなものをすればいいかいつも悩みます。自分の引き出しがないかこともそうですが、もう少し毎回の学習内容の指導案を検討する際に時間をかけようと思います。

ただ、一方で、現場の授業の中で授業時間とのトレードオフもあります。毎回授業の中で全てのPを時間をしっかりかけることができれば理想的ですが、なかなか難しいのではと思います。それをどのようにか解決できればと思いますが、1つには学習項目によってどこまでやるかのバランスを考えてもいいかもしれません。先日の投稿でも触れましたが、文法項目の中では宣言的知識から手続的知識になりやすいものもあれば、なるのに時間がかかるものがあるのではないかと考えています。なりやすいものについては、massed practiceのように重点的に行い、なりにくいものについては活動を行いながらも長い目で見て自動化を図り、その分他の文法に時間をかけるということも可能かもしれません。

まとめ

今回は先日勤務先にお招きして実施した佐藤臨太郎先生のご講演についてまとめました。

全体を通して、現場の先生方への配慮や敬意があり、一方的な講義ではなく参加者間での話し合いの場や参加者とのやり取りも行い、参加者の先生方が言いたいことを導いていくように行われ、2時間という長時間でありながらもそれを一切感じさせることなく充実した講演会でした。

講演会実施後の参加者のアンケートでも全員が満足しており、全員が「勉強になった」と回答し、時間の都合上できませんでしたが、参加者からも続きのWTC(Willingness to communicate)の話も聞きたかったと意見も多く、大成功の研修会でした。

佐藤先生、出張続きのご多忙の中、ご講演誠にありがとうございました。

皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.

Last Updated on 2024年3月29日

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