関西英語教育学会2025年度研究大会に参加して②(スピーキング編)

関西英語教育学会

6月も上旬が終わり,梅雨に入り,雨の日が続くことがありますね。私の方は先日,校外学習があり,週間天気予報から当日が雨であることはわかっていたものの,やはり当日も雨であり,あいにくのスタートでしたが,BBQ中から回復し,午後はみんなで砂場で遊んで,結果オーライな1日にすることができました。

前回は,先日参加した関西英語教育学会2025年度第31回研究大会について,2日目の午前中のプログラムであった生成AIについて紹介しました。

今回の投稿では、その午後のプログラムについて,自由研究発表と基調講演について紹介したいと思います。

関西英語教育学会HP

関西英語教育学会 | Kansai English Language Education

関西英語教育学会2025年度第31回研究大会

KELES 31st Annual Conference
関西英語教育学会(KELES)2025年度第31回研究大会2025 Kansai English Language Education Society 31st Annual Conference 2025年6月7日(土)・6月8日(日)J...

関西英語教育学会2025年度研究大会に参加して②(スピーキング編)

自由研究発表

午後最初のプログラムである自由研究発表では,桃山学院大学の寺嶋宏樹先生による「英語コミュニケーション活動が高専生の学習動機づけに与える影響― ディスカッションおよびディベートを通じた実証的分析 ―」,滋賀県立河瀬中学校・高等学校の杉浦悠真先生による「読解方略指導が高校生の動機づけと読解力に及ぼす効果―自律的な読み手の育成に向けて ―」,そして,奈良教育大学の髙木浩志先生による「初年次英語教育でのエンゲージメントが得られる授業づくりについて」の発表に参加しました。

寺嶋先生の発表では,ディスカッションとディベートを高専生に取り組ませることで,英語学習への動機づけを高めることに成功し,杉浦先生の発表でもリーディングでの方略を指導することで,リーディングの能力はもちろんのこと,同時に動機づけを高めることに此方も成功していました。自分の研究では有意差もしばらく見ていないので,綺麗に有意差が出ているのが羨ましかったです(涙)。また,髙木先生の発表では,これまで多種多様な現場で経験を積まれた話は興味深く,また現在の大学生に対してエンゲージメントのためになるための工夫が紹介されていました。

それぞれ,先生方の興味関心について研究報告・実践報告が行われていましたが,偶然にも参加した3つとも動機づけに関する発表であり,最初の2つでは自己決定理論,そして最後はエンゲージメントの紹介がありました。それぞれにおいて活発な議論が行われ,今回は自分の発表がありませんでしたが,自分も発表しておきたかったなと思いました。

基調講演

最後の基調講演は,畿央大学の福島玲枝先生による「学習者のやりとりを支えるスピーキング指導──会話分析を手がかりとした授業実践の視点」でした。福島先生とは今年度から学会のお仕事で関わるようになり,そのタイミングで今回の学会でお話を聞くことができるということで,今回のお話を楽しみにしていました。

福島先生については此方をご覧ください。

福島 玲枝 (Akie Fukushima) - マイポータル - researchmap
researchmapは、日本の研究者情報を収集・公開するとともに、研究者等による情報発信の場や研究者等の間の情報交換の場を提供することを目的として、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運営するサービスです。

ご講演では,ご自身の研究内容の会話分析によって得られた知見について,リテリングを中心にこれまでされてきた現場での実践も交えながら,スピーキング指導改善に向けての提案がありました。

まず,先行研究ではcommunicative competence(Canale & Swain, 1981; Canale, 1983)のように知識や技能のような話者が持つコミュニケーション能力自体が注目され,それを使っての他者との関わりにはあまり目が向けられていなかったことから生まれたinteractional competence(Kramsch, 1986)が紹介されました。interactional competenceは,「文脈に応じて、言語的・相互行為的資源を使いこなす力」そして「他者とのやり取りを通じて、協働的に意味を構築する能力」と定義され(Young, 1999, 2011),福島先生からは現行の学習指導要領が目指すところがこのinteractional competenceの育成と一致していることが指摘されました。

では,そのinteractional competenceの育成のための授業として,まずは,その後,ご自身のスピーキングでの実践の際に,生徒がよく沈黙してしまうことがあったことから,生徒に日頃から意識してほしい心構えとして,次の5つが紹介されました。 ①1番に伝えたいことを残す,②SVを明確にする,③文章はシンプルにする,④曖昧な表現は具体的にする,⑤簡単な表現にする。例えば,②だと,まず生徒の発言としての「やばいやばい。」に対して,「(点数が)悪すぎる。」と言い換えを行い,英語にすると”My test score is so bad.”というような流れで紹介されていました。ここでは,スピーキングでの心構えでしたが,外部試験や大学入試でのライティングの際にも重要な点かと思います。

次に,「伝え合う」ための授業実践として,ご自身が取り組まれてきたリテリングと,それまでのオーラルイントロダクションや音読などの紹介がありました。オーラルイントロダクションでは,新出語彙や新出文法の導入はもちろんのこと,ただただ英語を話すのではなく,最終的に生徒がリテリングを行うためのモデルである必要があることを強調されていました。そのモデル提示に関しては,英語自体はもちろんのこと,それを最終的にリテリングの際に生徒自身が聴衆とどのようにやり取りをするか分かるために,聞いている側とどのようにやり取りをするかについてもでした。

そして,リテリングへの準備に向けて,その課で学習した表現の定着活動として,様々な音読方法の紹介,特に主語を登場人物の1人だけにすることでその人視点で英文を変えたり,世界の様々な場所についての単元の際には最初の場所を変えることで時差によりその時の時間も変えなければならないなど,考えながらの音読は興味深かったです。

最後のリテリングでは,ただ教科書英文の再話だけになることなく,自分の意見や感想を含めることを目標としていましたが,なかなか発言できない生徒をサポートするために,それまでのオーラルイントロダクションで指名で英語の質問に答えさせることや音読をしっかり行うことなど,そこまでに至る準備段階が重要であることが述べられていました。それでも発表途中で言い淀んでしまう場合には,教示側から質問補助をすることが紹介されていました。リテリングの発展編として,自問自答の質問を入れるや,クラスメイトに質問をする,本文と聴衆をつなぐ導入を加えるなど,大変興味深いリテリングのカスタマイズも紹介され,自分の実践でもこのように難易度を調整すればよかったのかと思いました。そして,リテリング活動後のフィードバックにおいても,1回1回の生徒の個々のパフォーマンスに対して,良かったところや聞きたいところなどについて行われ,形成的評価はこうでなくてはならないなと改めて考えさせられました。

福島先生の発表は,研究はもちろんのこと,授業実践自体も全体を通して,その細部の1つ1つが緻密に計画されているところが印象的であり,もっとこのレベルまで授業計画を詰めていかなければならないなと,自分の授業を次のレベルに上げるために見直す素晴らしい機会になりました。

まとめ

今回は関西英語教育学会研究大会の午後のプログラムについて紹介しました。

京都が開催地ということで距離が遠く,正直行くかどうかを悩んでいたのですが,友人たちやお世話になった先生方にもお会いすることができ,参加してよかったです。次の学会は山梨での中部地区英語教育学会です。ご参加される方はお会いできることを楽しみにしています。

皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.

Last Updated on 2025年6月12日

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