皆さんいかがお過ごしでしょうか。最近は成績処理も終わり、絶賛補習期間中です。さて、投稿内容が前後しますが、先日、2月24日(土)に開催された「外国語教育メディア学会関西支部公開講演会」に参加してきました。今回の講演会の発表者は、神奈川大学の鈴木祐一先生と立教大学の中田達也先生でした。どちらの先生方も現在、SLAや英語教育において世界から注目されている日本人研究者です。
今回の投稿では、その研究会での内容とそこで考えたことについて共有します。
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研究会の内容
1つ目の鈴木先生の発表では、「Practice研究の新しい動向:効果的な文法練習とは?」と題して、タイトルにもあるように現在のpractice研究の動向についてお話を頂きました。Practiceの定義が、Audio-lingual methodのような従来のものからより広義なものになり、明示的知識をどのように自動化されるかについての話がありました。特に印象的であったのは、spaced practiceとmassed practiceのそれぞれによる宣言的知識と手続的知識の効果の違いでした。宣言的知識は身につけやすいので定着させるためにspaced practiceで間隔を空けながら取り組み、massed practiceを通して宣言的知識を手続的知識にする。それぞれの比較については鈴木先生のスライドが見やすいと思います。
鈴木先生の発表スライドについては鈴木先生のHPからご覧頂けます↓↓
2つ目の中田先生の「第二言語語彙学習における効果的なPractice:どのような練習をいつ行うべきか?」の発表では、主に語彙指導におけるテスト効果についてでした。その中で興味深かったのは、テスト方法でした。音声テストと筆記テストでは音声テストの方が筆記テストよりも筆記面と同様に音声面も高めることができることと、そして、多肢選択式テストと記述式テストでは、あまり大きな差がなく、学習効率の観点では多肢選択式の方が効率的であるということが先行研究がわかっており、現場においても大きさ示唆になるではと思いました。また、練習スケジュールについても、分散効果について、短期間で覚えるものには間隔を短く、長期的に覚えるためには間隔を長くすることが報告されました。
学習項目と練習のタイミング
今回の鈴木先生のご講演では、宣言的知識と手続的知識の関係性について理解を深めることができましたが、鈴木先生のご著書の中で気になっていたspaced practiceとmassed practiceについてお話を聞くことができたことがよかったです。語彙指導の中でのspacingについては何度かお話を聞いたことがありますが、文法指導におけるspacingについて、spaced practiceとmassed practiceについては大変興味深かったです。普段の生徒の学習の中で取り入れると、spaced practiceは宣言的知識を長期定着することから毎日の授業と、massed practiceが授業で学習した宣言的知識を手続化するという授業外の家庭学習と考えることができるかもしれません。もちろん宣言的知識として身につけたことを授業の中でmassed practiceを行い、手続化することもできるかと思います。やはり全ての言語項目を手続化・自動化するには相当の時間が必要であり、授業だけではなかなか難しく、授業の中で実施するにしても50分の授業ではまとまった時間は取りにくいので、1コマが90分などの長い時間であれば手続化する時間も確保しやすいかもしれません。
一方で、授業時間が有限であるが故、学習項目を全て均等に手続的知識までの習得を目指すのではなく、項目によって宣言的知識までにするか、手続的知識までにするかのカリキュラムの検討は行われてもいいかと思います。学習項目によっては、手続的知識になりやすいものもあれば、なりにくいものがあるかと思います。そのため、あくまで宣言的知識を身につけた後、手続化をその項目については諦めるのではなく、その後の指導の中で徐々に手続化されるのを待ち、その分他の宣言的知識の項目の手続化に時間を費やすことができるかと思います。これについてはあくまで仮説の上での検討なので現時点では実現可能性は高くないかと思います。
普段の単語テストの実施方法
中田先生のお話のテスト方法のお話では、テストの実施方法について、次年度以降の単語テストについて検討のヒントを頂きました。普段の週1回の単語テストでは、単語の書き取りと意味の選択の2種類を1つのテストで実施しています。ただ、今回の中田先生のお話では、単なる書き取りではなく音声を合わせた方が音声面にも良い影響があるということだったので、音声面を流しての単語テストが特に中学校では有効かと思いました。ただ、単なる書き取りと違って音声の準備や実施方法など実用性の部分で少し問題はあるかもしれません。一方で、書き取りか多肢選択式の比較では、差があるもののそれほど大きな差ではありませんでした。その部分では、書き取り式ではなく多肢選択式でもいいのではと思いました。また、生徒たちは普段他教科やクラブ活動などで忙しいので、多肢選択式の方が学習効率としても取り入れやすいかと思います。今回のお話を踏まえて、次年度以降の単語テストの実施方法について検討していきたいと思います。
まとめ
今回は、先日参加した外国語教育メディア学会関西支部の公開講演会の内容と参加して考えたことについてまとめました。文法と語彙については普段の指導の中で考えなければならないことがまだまだあり、ここのところは補習を行いながら次年度の授業についてどのように展開していこうかと検討中です。
皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.
Last Updated on 2024年3月29日
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