さて、文法指導の際に、その課で学習する文法の例文をどのように生徒に提示していますか。
文法の授業でその課の文法の例文を唐突に提示してしまうと、文脈から完全に切り離され、「Lucyって誰だよ」とか「何でplay soccerなの」というように、生徒にとって感情移入できず、無意味なものになってしまいます。しかし、教師が文脈を与え、意味あるものにすることができれば、例文は生徒にとって英語を話すための基となる言語材料になると思います。
今回は、私の授業で行っている文法指導での例文の導入の仕方について話したいと思います。
絶対暗記例文
私の授業では、「絶対暗記例文」という例文のシリーズを毎回の文法の授業で導入しています。
文法の授業においてその文法の核となる例文を身につけることは重要であり、将来的にはそこから生徒たちは頭の中に文法の体系を構成していき、コミュニケーションでの発話につながると思います。
しかし、教科書や問題集に書かれているような例文をただ単に導入することは、生徒にとっては何の関連もなく必然性もなく、覚えろと言われても何の面白みもなくただただ苦痛になってしまうのではないでしょうか。
そうしないための工夫はごく簡単です。例文と一緒にそれに関連した画像を一緒に提示しましょう。
え、それだけと思うかもしれませんが、それだけです。
例文の文字情報だけではなかなか状況を連想することは難しいですが、画像が加わることで視覚的にも例文の意味を理解しやすくなります。また、暗記という観点からも文字以外の情報を取り入れることができ、より印象を残すことができるのではないでしょうか。
具体的に作ってみましょう。さて、皆さんは助動詞でmustの例文を作ろうとした際に、どんな状況を思い浮かべますか。
私の場合は自ら根気強く勉強する様子が浮かびました。そこで画像を検索しそれに相応しい画像を見つけます。
それをPowerPointやKeynoteを使って、1つのスライドにします。
これで完成です。mustということで単に「〜しなければならない」と意味を教えるだけでなく、自ら取り組む様子も伝わるのではないかと思います。
実際はもっと激しい様子の写真を使いましたが、ここでの例はマイルドなものにしました笑
また、mustの後にhave toを導入することにもなるので、have toの際には叱られ嫌々勉強させられている画像を選び、”You have to study English.”と作成して、mustとhaveの比較も行うこともでき、生徒たちに「”I must study English.”と”You have to study English.”の内、皆さんはどっちに近い?」と聞いたことがあります。どう返事が返ってきたかはご想像にお任せします笑
このように、生徒たちが単なる1つの例文であっても意味を持たせることができ、それぞれの文法のニュアンスについても具体化することができます。
また、アニメや漫画、ドラマの名シーンなどを取り入れることで、英語の苦手な生徒が少し取り組んでみようかと思ってくれることもあります。
ただ、教育の現場だからと言って何でも画像を使用するのではなく、著作権については知識として身につけおいて下さいね。
さらなる活用法は?
もちろん、画像と例文を作成したからと言って、ただ単に授業で提示するだけではもったいないです。その画像と例文には何かしら前後の文脈が存在するでしょうから、その例文の導入の前に、その画像と例文についてのオーラル・イントロダクションを行うことができます。
例えば、アニメや漫画の名シーンを例文にした場合には、そのアニメや漫画についての英語クイズや、そのシーンに行くまでの物語のあらすじを英語で導入することができます。生徒たちも興味を持って聞くことができ、英語のインプットを多く与えることができるでしょう。
オーラル・イントロダクションについては、あまり写真を多用しすぎると良くない側面もありますが、それについてはまた今度話したいと思います。
また、画像と例文のセットが増えてこれば、カルタ大会やスピードテストなど、他の活動に色々と発展させることができます。
唯一にして最大の欠点
画像と合わせた例文導入はこのようにメリットが多いのですが、欠点は、この例文と画像のセットを1つ作るのに相当な時間と労力を使ってしまうところです。私の場合は、毎回の全体の教材研究で1番と言っていいほど時間がかかってしまいます。1つの絶対暗記例文を作るのに1週間かかることもあります。そのため、日頃から流行しているものや生徒たちが好きなものについてアンテナを張っておくことが必要です。筆者は絶対暗記例文ネタ帳に何か思いついたらメモするようにしています。ただ、色んなネタと合わせて授業ができることは英語の強みでもありますけどね。
最後に
今回は、実践紹介として、文法指導においての画像を使った例文導入についての話をしました。元々のアイディアは北海道の先生から学んだものですが、生徒たちも毎回リアクションしてくれ、文法を円滑に導入することができています。導入の際に作った例文は、文脈から外れてしまい、どうしても無味乾燥なものになりがちですが、そこに文脈を追加し、オーラルイントロダクションを取り入れれば、生徒にとっても質の高いインプットを与えることができるのではないかと思います。
皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.
Last Updated on 2024年3月29日
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