外国語学習はAI時代に必要ないのか〜『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んで〜

英語教育論

2月に中旬となり,来週には3月ということで,あっという間に時間が過ぎていきますね。少しずつ暖かい日も出てきて,春が近づいていることを感じる今日この頃ですが,皆様いかがお過ごしでしょうか。

今日の投稿では,先日読んだ三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を通して考えたことについて紹介したいと思います。

三宅香帆著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

この本を取ったきっかけは簡単なものです。本屋でウロウロしていると,その名前が目に入り,「確かにここんところ忙しくて読めてないな」と思い,そして「どうせ『忙しくてもこうしたら読めるよ』みたいなハウツー本なんだろうな」と思い,本を読むのを再開する良いきっかけだなと思い,購入して読んでみると,いい意味で裏切られました。本書は,本を読むのが大好きだった筆者が働き始めてからめっきり本が読めなくなり,スマホゲームばかりしてしまうという状態に陥ったことから,日本人が忙しくて本を読めなくなったのはいつからなのかを掘り下げるために,日本人と本の歴史について,時代ごとでの本の役割や,どのような本のジャンルがその時代において流行したかなどを紹介する書籍でした。最後には,筆者の本を読むハウツーについては簡単に書かれてはいましたが,読み終わってみて,日本人と本の関係について知ることができる大変興味深い本でした。

心の余裕はやはり大事

先ほどは日本人と本の関係を紹介してくれる書籍と言いましたが,あくまで本題はタイトルにもあるように「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」です。書籍では,筆者がその問題に直面し,その後再び本を読むことができるようになったのは,仕事を辞めてからと紹介されていました。なぜでは読むのが再開できたかというと,本書では,「読書はノイズ」という比喩を交えて議論が行われ,今のの時代において,知りたい情報を得たければインターネットで調べればいいのであり,本を読む必要はない。読書は知りたい情報以外に文脈や背景,関係のない情報など,知りたい情報以外にまさに「ノイズ」を含んでいます。そのノイズを処理しながら知りたい情報を模索していくには体力も余裕も必要で,だからこそ本を読むことが億劫になり,手軽なインターネットやスマホゲームに耽ってしまう。心の余裕や元気なうちは新しい人に関わることや今までやってこなかったことにも挑戦することができるが,余裕も元気もない時には,あまり人とも関わろうともせず,日々生活することもままならなくなってしまう。だから働いていると本が読めなくなる。もちろん全員がそうであるというわけではありませんが,ここんところの自分の状態を見ていると,目の前のことで精一杯で余裕もなく,やっと色々とメドが見えてきて,本を読もうかと思える状態になったことを振り返ると,心の余裕は大事だなあとしみじみと思いました。皆さんは心の余裕を持ちながら働くことができていますか。

英語学習もノイズ?

今回この本を読む中で,この「ノイズ」という考え方は大変参考になりました。昨今,AIにおいての言語面の発展は目覚ましく,英語を入力して指示すれば自然な日本語に,また逆も然りというように,難解な英語で書かれた記事や論文も,ChatGPTやGemini,NotebookLMを使えば,簡単なスライドや動画,ポッドキャストにしてくれ,何かを学ぶ上での外国語の壁はどんどん低くなり,もはや外国語学習をする必要もないのではと言われることもあります。しかし,これについてもこの書籍の「ノイズ」の捉え方で考えることができるのではと思います。何かを知りたいやこれを勉強したいという点においては,AIやインターネットの方が環境がある限りはいつでもどこでもアクセスることができ,その上瞬時に答えを得ることができます。そして,自分の理解が遅かったとしても,人なら嫌気がさしてくる回数だったとしても,AIなら嫌な顔することなく何度でも繰り返し尋ねることができます。

一方で,人とのコミュニケーションは,聞きたいことを聞いても,すぐ答えてくれることもあれば,それに至る前の話をすることや,途中から全然違う話題になることなど,ノイズだらけかもしれません。しかし,だからこそ,人とのコミュニケーションは面白いのだと思います。我々のコミュニケーションのほとんどが,情報を得るためではなく,そもそも答えのない話題や他愛のない話などがほとんどであるけれど,そんな時間が楽しく,あの人とまた話したいに繋がるのではないでしょうか。それこそがまさに言語でのコミュニケーションを学ぶ意義だと思います。アプリやAIがどれだけ発達しようと,「その人」とのコミュニケーションを取りたいという気持ちが人間にある限りは,外国語の学習の意義は失われないのではないでしょうか。

まとめ

今回は,先日読んだ三宅香帆著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を通して考えたことについて紹介しました。よくよく英語なんて勉強しなくていいということが技術発展の度に言われます。ただただ情報を得るためだけであればその通りかもしれませんが,その人の話を聞いてみたいやその人とご飯に行ってみたいという思う限り,外国語学習の近道が外国人の恋人を作ると言われるように,外国語学習の価値自体は変わらないと思います。英語教師として生徒たちに英語でのコミュニケーションの楽しさを伝えることができるように尽力したいと思います。

皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.

参考文献

三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

Last Updated on 2026年2月16日

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