5月に入り,少し経ちましたが,日中は陽が当たるところは暑いものの,朝方や日陰はまだまだ肌寒く,なかなか過ごしにくい時期が続きますね。私の勤務校では球技大会が実施され,良い天気の中で実施できた学年もあった一方で,私の学年は雨に降られながらの実施となりましたが,これも高校最後として良い思い出になったのではないかと思います。
さて,前回は大学受験に向けた語彙指導の中で感じた単語帳の必要性について考えてみました。私自身は日本の英語学習環境では単語帳は必要かと思います。ただ,生徒たちの置かれている状況の中でその運用方法や位置付けについて1度考えてみてもいいのではないかと思っています。
今回は,単語帳について考え直してみるために,単語帳を使わない代替案について紹介したいと思います。
前回の投稿は此方から。
単語帳を考え直してみませんか?
タイトルはちょっと強気かもしれませんが,メッセージとしてはズバリ,教科書やその他の教材など,今使用している教材をもっと使いましょうということです。
メインの教材を中心に
昨今の学習指導要領や共通テストなどの大学受験,そして外部試験の背景もあり,教科書や副教材などの他の教材も語彙量も文量も年々増えてきています。それらをまずは徹底的に使わない手はないでしょう。効率面では単語帳の方が1度に覚えることができる量は多いかもしれませんが,1つ1つの単語を日英対照だけで無機質に覚えていくだけでも苦労します。一方で,1つの単元で新出となる語彙は単語帳に比べれば少ないかもしれませんが,扱った英文中に出てくる語彙はその使われている文脈や場面を学習することができ,単なる日英対照に比べれば効果的に覚えることができることも多いでしょう。
教材を繰り返しましょう
前回でも紹介したように語彙を身につける上で頻度は重要な役割をします(Nation, 2013)。単語帳では次々と新しい語彙が出てきて,繰り返すことを意識していなければ,とりあえず範囲の単語をどんどん覚えることになるでしょう。そうする中で単語をどんどん覚えていければ理想ですが,人間は忘れる生き物であり,学習した翌日には多くの語彙を忘れてしまいます(私の場合は昨日の晩御飯もよく忘れます…)。
その頻度を確保するために,教科書などの教材の繰り返しはいかがでしょうか。単語帳もそうですが,教科書などの英文を繰り返すことで多くの語彙に再度触れることができます。もちろんある程度忘れることは仕方ありませんが,既に扱った英文であれば,生徒にとっても新しい語彙を新たに覚えることに比べれば心理的な負担も大きくはないかと思います。
辞書などを利用し,1つ1つの単語の質を高める
また,単語帳ではなく教科書等に集中することで,新出語彙が出てきた際には,辞書を利用させることもできるでしょう。単語帳を辞書代わりにする生徒を見かける場合がありますが,単語帳では紙面の都合もあり,掲載できる情報には限界があります。一方で辞書ではより詳細な解説や説明の図表はもちろんのこと,例文も豊富に掲載されているので,調べる際にはうってつけです。また,辞書の利用によって様々な意味を確認することができるのはもちろんのこと,例文を扱うことでその表現の語法やコロケーションを確認することができます。私の授業でも最近は特に,英文和訳でも和文英訳でも微妙な表現の違いを確認する際には,辞書で引いたページを紹介し,語彙を調べる際には生徒に辞書を引くように伝えています。
単語テストでも繰り返す
最後には,単語帳で実施してきた授業内外での単語テストを教科書などのメインの教材の語彙について実施することで,学習した語彙に出会う機会をさらに用意することもできます。利便性としては頻度を高めることができるだけでなく,単語帳の単語テストでは新出単語ばかりで日英対照ぐらいしか出題できなかったのが英文中の空所補充などさらに発展的な出題もすることができます。また,その英文で出てきたフレーズでの書き取りを出題することもできれば,授業内で辞書の利用を取り入れていれば,その辞書の中での表現やコロケーションからも出題することができます。
特定の要望に対しては生徒に選ばせる
ここまで単語帳を使わない方法を紹介してきましたが,もちろん単語帳が役に立つ時もあるかと思います。例えば,資格取得に向けての単語帳を購入したい生徒もいれば,学習法略として単語帳での学習を好む生徒もいることでしょう。そのような生徒は単語帳を購入させてやればいいかと思います。そのような生徒は自ら英語に対して取り組もうとしているわけですから,その取り組みを尊重するべきと思います。要は,何でもかんでも授業者が決めるのではなく,単語帳を選ぶことも生徒に任せてやればいいということです。
まとめ
今回は,前回の単語帳の必要性の見直しを踏まえて,単語帳の使わない指導について提案しました。もちろんあくまでこれは提案であり,私自身も現在は単語帳を使用しているので,今後は自分で実践して効果を検証する必要があります。ただ,昨年度のTANABU Modelで授業をして,教科書を繰り返すことで生徒の語彙力が強化されている様子を見て,その可能性を感じています。新たな学年を受け持つことができた際にはそのような取り組みを実践していきたいと思います。
皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.
参考文献
Last Updated on 2025年5月9日
コメント