2月に入ったかと思えば,時が経つのは本当に早く,もう中旬になってしまいました。大学受験や中学受験のシーズンではありますが,先日勤務先でも高校入試が実施され,多くの受験生がそれぞれの教科に全力を注いでいました。生徒にとってはこれで受験が終わる人もいるかもしれませんが,受験生の皆様にとって良い進路になることを願っています。
さて,前回の投稿でTANABU Modelのこってりコースについては一区切りとしました。
今回の投稿からは,TANABU Modelのメインである超こってりコースと実際にどのように運用したかを紹介していきたいと思います。
前回の投稿は此方から。
TANABU Modelについては此方の書籍でご確認ください。
超こってりコース
超こってりコースは,大まかな流れはこってりコースと同様ですが,最後にパフォーマンステストが設定されているのが大きな特徴です。こってりコースでは各パートを3時限で回しますが,超こってりコースではdictationとretellingの時間を省き,それぞれのパートを2時限で実施し,その分パフォーマンステストに準備も含めて7時間分割きます。パフォーマンステストは各学年で内容が設定され,1年生ではロールプレイ,2年生ではディベート,3年生ではディスカッションが実施されます。テストの内容については学年や生徒の実態に合わせて調整してもいいかと思います。
時限 | 内容 |
---|---|
1時限目 | Paragraph Chart, Summary Writing, Reading Comprehension |
2時限目 | Vocabulary and Expressions Practice, Reading-aloud Activities |
3時限目〜8時限目 | 1・2時限目と同様の流れ |
9時限目〜15時限目 | パフォーマンステスト |
TANABU Modelの4つのコースは此方から。
[URL]
勤務先ではそれまで実施してきた改訂版のこってりコースの流れを踏まえて,しっかりと音読した後なのでその成果を発揮するためにdictationを残し,やはり時間がかかる傾向であったsummary writingを除くことで,多少時間がずれ込むことがあっても,今まで通りの流れでパフォーマンステストまで授業を実施しました。また,dictationを実施することで,各パートごとでの生徒たちの頑張りも評価することができます。
時限 | ワークシート |
---|---|
1時限目 | Small Talk, Paragraph Chart, Reading Comprehension |
2時限目 | Vocabulary and Expressions Practice, Reading-aloud Activities |
3時限目 | Dictation, Small Talk, Paragraph Chart, Reading Comprehension |
4時限目 | Vocabulary and Expressions Practice, Reading-aloud Activities |
5時限目〜8時限目 | 3・4時限目と同様の流れ |
9時限目〜15時限目 | パフォーマンステスト |
パフォーマンステスト
先ほど紹介したように,超こってりコースでは最後にパフォーマンステストが設定され,活動にはロールプレイ(1年),ディベート(2年),ディスカッション(3年)があります。その中で今回の授業ではロールプレイを実施してみました。
ロールプレイ
ロールプレイは2人1組になり,片方が司会者役,もう片方がとある人物役になりきり,番組内で司会者役がいくつかの質問をしてインタビューをするというものです。今回扱った教科書の単元が,女性初パイロットになったアフリカ系アメリカ人のBessie Colemanさんについてのものであったので,この活動は最適でした。
本番までの流れとワークシートについては,TANABU Modelの書籍の実施方法とは多少の変更をしましたが,基本的には書籍の通りに実施しました。
時限 | 内容 |
---|---|
1時限目 | ペア作成,質問アイディア出し |
2時限目 | 質問決め,原稿作成開始 |
3時限目 | 原稿作成続き,原稿提出 |
4時限目 | 原稿修正,練習開始 |
5時限目 | リハーサル |
6時限目 | 本番 |
7時限目 | 本番(残り) |
1時間目:ペア作成,質問アイディア出し
パフォーマンステストの概要を説明し,実施のためのペア作成を行いました。基本的には自分たちで自由にペアを組むようにしました。ただ,クラスの人数が奇数であることや人間関係等の問題もあるので,3人班を作成することも許可しました。その場合は3人の中で2回取り組む人を決めるようにしました。また,最初から班で作り,その中で誰と誰が実施するという形にするクラスもありました。そのようにペア作成は柔軟に対応すればいいかと思います。
その後,インタビュー役が質問を3つ尋ねるための元となる5つの質問を決めるために,とある人物への質問を1人1つ作成させました。その際には好きな食べ物などの教科書に一切書いていない内容ではなく,あくまで教科書の内容に書かれていること,または教科書の内容から類推できることについて質問を作成するように指示をしました。その後,出てきた質問を集め,全員でどの質問がいいかを投票させ,その結果を元に次回に質問を決めることにしました。
2・3時限目:質問決め,原稿作成,原稿提出
1時間目の投票の結果を公表し,まず2つの質問が得票数が多かったので,その質問については決定しました。残りの3つの質問については,同票数であったものについて話し合わせ,再度投票を行い決めました。
ただ,質問の中に”What was the hardest part about getting your pilot’s license in France?”というものがありました。この質問は,Bessieさんがアメリカでは航空学校に通うことを許可されず,パイロットの資格を得るためにフランスに渡ったことに関してのものでした。これは最初の投票でも投票数が多かった2つのうちの1つでしたが,質問への回答は教科書に記載がなく,また内容から類推できるものでもありませんでした。最初の質問作りの制限では引っかかってしまうものでしたが,これは是非生徒たちに考えて欲しいと思い,海外に渡った際にどのような困難や問題に直面するどうかをクラスで簡単に話し合わせ,言語や文化,知り合いがいないなど様々なアイディアが出て,自分たちで1つ決めて原稿を作成するように指示しました。

原稿作りでは,質問と回答の部分を空欄にした番組の台本を配布し,ペアまたはグループで内容を確認し,質問と回答を埋めるように指示しました。教科書や今までのワークシートを参考にしながらどのペアもグループも原稿作りに取り組んでいました。3時間目も準備時間として設け,その時間の最後に原稿を回収しました。
4時限目:原稿修正,練習開始
前回回収した原稿を簡単に添削を行い,4時限目の最初に返却しました。添削としては基本的には書いてきたものを大事にし,意味や内容が異なってしまうものを中心に訂正しました。返却の際には原稿で共通に見られた間違いについて紹介しました。今回の添削の際には質問に対してbecauseから始めて書いているものが多く見られ,もちろんインタビューは口頭のものなので,becauseから始めてもいいですが,あくまでフォーマルなやり取りの方が良いと思い,また副詞節の確認には良い機会と考え,原稿作りの段階ではbecauseを単体で使用する際には,that’s becauseなどで始めるように話しました。
添削されたものを元に修正を行い,修正したペアやグループから読み合わせの練習を開始しました。次回の授業ではリハーサルを行うので,その際にスムーズにできるように指示しました。
5時限目:リハーサル
リハーサルでは,司会者役とBessie役の配役と5つの質問から尋ねる3つを決めるのは本番の直前にくじで決めるので,練習として全てのペアやグループにくじを引かせ,一斉にまずは1回目のリハーサルを実施しました。あくまでリハーサルなので原稿を見ながら実施してもいいことを伝えました。その後は全体が終わったのを確認し,先ほどの役を交代し,使用しなかった2つの質問ともう1つは自分たちで決め,2回目のリハーサルを実施しました。リハーサル後は次回の本番に向けて教室の設営を行いました。番組のスタジオのように司会者とBessieの席を白板前に用意し,その前に椅子を並べ他の生徒が観客として座るようにしました。せっかく設営したので,本番に向けて1度練習してみてはと投げかけると,1組がデモンストレーションとして実施,本番の流れについてもリハーサルを行うことができました。

まとめ
今回はTANABU Modelの超こってりコースを紹介しました。いよいよ超こってりコースのパフォーマンステストに挑戦しましたが,生徒たちが本当によく取り組んでくれ,スムーズに本番までを迎えることができました。また,準備も時間をかけ過ぎることなく,テンポよく進んだので,あまり間延びすることもなく過ごすことができました。
次回はいよいよパフォーマンステスト本番についてどうだなったかを紹介できればと思います。
皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.
参考文献
金谷憲・堤孝 (2017).『レッスンごとに教科書の扱いを変えるTANABU Modelとは―アウトプットの時間を生み出す高校英語授業』アルク出版.
Last Updated on 2025年2月16日
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