単元によって授業を変えませんか?〜TANABU Modelその4〜

TANABU Model

本格的に2月に入りましたが,いかがお過ごしでしょうか。寒さはますます厳しく,今週はその中でも1番の寒さであり,自転車のでの通勤も耳が痛くて仕方がなかったです。朝も夜も厳しい寒さですが,運動して暖かい食べ物を食べながら切り抜けていきましょう!

さて,前回は昨年より取り組んでいるTANABU Modelについて,「こってりコース」を実施する中で出てきた問題点を紹介しました。

今回の投稿では,その問題点を踏まえての改訂版こってりコースについて紹介しようと思います。

前回の投稿は此方から。

TANABU Modelについては此方の書籍でご確認ください。

改訂版こってりコース

前回の投稿を通して実際にこってりコースを実施しての問題として,「やり取りの不足」,「要約活動での個人差」,「アウトプットまでの準備時間の確保」を挙げました。それらの課題を踏まえて,こってりコースをこのような流れに改訂してみました。次の項目からその追加点・変更点について説明します。

時限ワークシート
1時限目Small Talk, Paragraph Chart, Summary Writing
2時限目Reading Comprehension, Vocabulary and Expressions Practice
3時限目Reading-aloud Activities
4時限目Dictation, Retelling

Small talkの追加

まずは単元の導入としてsmall talkを追加しました。Small talkの目的としては,単元に対しての生徒たちの興味関心の引き付け,コミュニケーションの設定,インプットの提供です。

単元に対しての引き付けとしては,単元をただワークシートを配るだけの作業的な進行にするのではなく,生徒が単元に興味を持ってくれるように身近な話題から始め,単元のテーマに近づけ,知ってみたい,読んでみようと思えるように仕掛けを作ります。

コミュニケーションの設定としては,ワークシートが中心の指導の中で自由な発話の機会を少しでも持つために,small talkの中で生徒たちが身近な話題や自分についてペアやグループで英語でのやり取りをさせます。色の単元を扱う際には,単純ではありますがWhat color do you like? Why?や,新札の単元の際にはWhat did you buy recently?などを自由に話させました。

最後はインプットの提供です。教科書を使う授業なのでリーディングが中心となりがちですが,small talkによって教科書に関する表現はもちろんのこと,前時の学習内容を含めたり,表現のレベルを調整したり,学習者に応じて様々な工夫をすることができます。もちろんそのような臨機応変な英語の調整には高度な英語力も必要ですが,事前にある程度の原稿を準備することで授業の中で色々なインプットを与えることができます。

要約活動の変更

Small talkを追加したので,その分reading comprehensionを次の時間に移動し,1時間目はsummary writingで終わります。その要約活動について個人差のために時間がかかることがあったので,改善点としてまずは100字を目指すのではなく,100字以内としながらも自分が理解した内容で要約し,100字未満になってもよしとしました。どうしても100字となると生徒によっては難しく感じて,ましてや内容が英語ということでその内容を理解するのに苦労してしまい,書くことができるのに取り組むのが億劫になってしまう生徒もいるかと思います。

そのため,100字以内ではあるものの100字に満たなくてもよしとすることで,苦手な生徒も自分の理解の中で頑張って書いてくれるようになりました。また,どうしても授業で終わらなかった場合には宿題としましたが,要約自体には苦戦しながらもほとんどの生徒が授業内に終えることができ,終わらなかったとしてもあと少しで終える状態にはすることができていました。

音読練習の時間確保

最後にdictationとretellingの前に,しっかりと練習する時間を設定しました。こってりコースの流れとしては最後の仕上げとしてdictationとretellingがありますが,少し練習しただけですぐ翌日の授業で取り組むには生徒によってはなかなか難しく,また英語のレベルに広がりがある中では全員が準備できている状態にするにはもう少し時間をかける必要がありました。

そこで,2時限目のvocabulary and expressions practiceでは日英対応のフレーズを繰り返し音読等で練習し,3時限目では再度その確認と練習をし,後半では本文全体の日英対称を配布し,様々な音読活動を通して表現の定着を図りました。それにより生徒たちは十分に練習をすることができ,生徒によっては授業の中でほとんど覚えてしまう生徒も何名も出てくるぐらいでした。そして次の時間のdictationはもちろんのこと,retellingでも頭の中に本文をしっかりと入れることができているのでその表現をいかにアウトプットするかに時間をかけることができ,どの生徒も何とか表現を繋ぎながら取り組むことができていました。

次の問題点

このようにを自分の指導する生徒たちに合わせて,こってりコースを改定しましたが,やはりまだまだ問題点があります。1つには生徒の練習時間を確保するために本来1パート3時限で終えるところを4時限に使ってしまうので,1つの単元を終えるのにかなり時間がかかってしまいます。勤務先では私立ということもあり時数が少し多めに設定されてはいますが,それでも1単元を終えるのに12時限で終えるのと16時限で終えるのは週で言うと1週であり,授業計画も大きく変わってきます。

もう1つの問題としては,しっかりと練習する機会を与えたことで,retellingというよりreproductionに近い状態になっている点です。retellingとreproductionの違いとしては,retellingが本文の内容をその表現を使いながらも自分の言葉で伝えるのに対して,reproductionは本文のままもしくはほぼ同じ形式でアウトプットします(佐々木, 2020)。あまり例としては良いかは分かりませんが,聞いた英語をその通りに書くdictationと自分の言葉で書くdictoglossの関係に近いかと思います。ただ,もちろん最終的には自分の表現でアウトプットするretellingが目指すところではありますが,reproductionに近い状況であったとしても身につけた表現を使おうとしている様子はまだまだ言語資源が少ない学習者が新しい言語を身につけようとしている言語習得の途中も姿かと思いますので,授業者としてはreproduction的になっていたとしてもそれが単なる丸暗記なのか十分に理解したものなのかに注意しながらも,retellingへの指導も継続していきたいと思います。

まとめ

今回は現場で実践してみた課題から改訂したこってりコースについて紹介しました。Small talkや練習時間を確保することができたものの,retellingへの指導の継続や授業時数の超過など,まだまだ課題は山積です。時間確保のために,今後はワークシートの精査もしながらスリム化も考えていこうと思います。

皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.

参考文献

金谷憲・堤孝 (2017).『レッスンごとに教科書の扱いを変えるTANABU Modelとは―アウトプットの時間を生み出す高校英語授業』アルク出版.

佐々木啓成 (2020).『リテリングを活用した英語指導—理解した内容を自分の言葉で発信する』大修館書店.

Last Updated on 2025年2月12日

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