まずは教師がもっと英語を使いませんか?

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いよいよ3月も終わりを迎えようとしていますが、いかがお過ごしでしょうか。始まったと思えば終わってしまういつもそんな春休みですね。昨年は目の手術をして治療として家に引きこもらなければなりませんでしたが、今年は時間割作業がありながらも技術の発達により人手も必要がなくなり、のんびりした春休みを過ごせました。

さて、今日の投稿では、日本人英語教師の英語使用について最近思うことについてまとめて、次年度を迎えるに当たって気持ちを引き締めようと思います。

教師の英語使用について常々思うこと

現在の学習指導要領が施行されてからしばらく経ち、高校では次年度の高3で高校生が新課程の3年間を過ごすことになります。その前の学習指導要領から「英語で授業を基本とする」という文言が高校に追加され(現在では中学でも追加されましたが)、英語の授業は英語で行うのかという議論が当時はよく巻き起こりました。最近はトレンドも移り、そのような議論はあまり見ることはありませんが、あれから授業での日本人英語教師の英語使用はどうなっているでしょうか。

英語教師の英語使用率の1つのデータとしては令和4年度「英語教育実施状況調査」が挙げられます。その結果によると、発話の50%以上を英語で行っているのでは、中学校ではどの学年も70%以上で、高校では国際科の授業では8割以上となるものの全体平均では45%ほどになったようです。あくまで量的な結果なので、それぞれの現場の現状までは分かりませんが、傾向としては、学習指導要領の影響もあってか、この結果からは教師の英語使用率は高まってきているのでしょう。

文部科学省『令和4年度英語教育実施状況調査』より引用

私自身は常に100%というわけではないですが、生徒の習熟度にかかわらず、授業の最初にスモールトークを行うようにして、自分のビリーフとして授業では自分の英語を使うようにしています。ただ、自分の周りではあまり英語を積極的に使おうという雰囲気はあまり高くはありません。同僚が日本語で何か導入をしているのを見て、英語ですることを提案すると、英語ではちょっと時間がかかり過ぎるなどとあまり前向きには反応してもらえません。また、自己研鑽として学会や研究会での発表も英語で行うようにしています。しかし、学会発表では英語を選ぶことができますが、セミナーで英語での発表を申し出ると、あまり良い反応をもらいません。もしくは、「英語でやるなんて凄いですね」ということを言われます。

また、「先生が英語を話さなくても大丈夫」というような趣旨のセミナーを見ることがあります。その趣旨としては生徒たちにもっと英語を話させようというものでしたが、本当に教師は話し過ぎるほど英語を話していたのでしょうか。所謂「教師が話し過ぎている」はあくまで文法説明や英文和訳などのように日本語を話し過ぎているということでしょうが、教師が英語を話さずして英語授業での生徒の英語使用は活発になるのか甚だ疑問です。

学会に関しても、ネイティブが多く集まる英語がメインの学会では国内での開催にもかかわらず日本人の数は少なく、日本人が多く集まる学会は日本語で主に行われ、あまりネイティブたちは参加しない。英語は色々な国の背景の人たちとコミュニケーションを行うことができるツールにもかかわらず、英語教育学会でそれが積極的に使用されていないのは少し妙に感じます。

文部科学省の「英語教育実施状況調査」の結果からは少しずつ改善されているように思われるかもしれませんが、現場での現状としてはまだまだこれから改善していくべきではないでしょうか。もちろん授業にしても学会にしても日本語で行うことが悪であり全て英語で行われるべきということを言いたわけでは決してありません。ただ、日本人英語教師による英語使用はもっと行われてもいいのではと思います。

英語ができたらいいのに

「英語ができたらいいのに」とよく言われることがありますが、これはできるようになりたいとどのくらい思っているのでしょうか。英語の需要は旅行やビジネス、研究など様々ですが、一般的な「英語ができたらいいのに」は「(特段必要というわけではないが)英語ができたらいいのに」ぐらいではないでしょうか。多くの人が何か具体的に目標があるわけはないができるに越したことはないかと思います。

これは料理に似ているところがあると思います。料理をすること自体が楽しい人がいれば、外食で済ませる人、料理はするけど自動料理鍋で済ませてしまう人など料理への需要は様々です。料理が苦手であれば外食するか作ってもらう人を見つけるのと同様に、英語も苦手な人は通訳を雇うか英語が話せる友達に頼むか。最近では、料理は家にいても自動料理鍋が食材さえ入れれば作ってくれるのと同様に、英語もプログラムが翻訳も通訳もこなしてくれます。どれだけ料理を自分で作ることの意義を説いたとしても、簡単にアクセスすることができれば、なかなか料理を自分でさせることは難しいのと同様に、どれだけ自分の力でライティングやスピーキングをすることの意義を説いても生徒たちに伝わりにくい現状でしょう。

それでも英語の楽しさを伝えたい

そのような現状だからこそ、我々英語教師が英語でのコミュニケーションの楽しさや意義を伝えるべきではないでしょうか。確かに機械翻訳やAIは大変便利ですが、即興的な会話には、将来的には解決されるかもしれませんが、まだ限界がありそうです。そうであれば、英語教師が英語をもっと積極的に使用して、生徒たちに英語でのコミュニケーションの面白さを伝える意義はまだまだあるのではないでしょうか。

私自身も稚拙ながら英語が使える場では積極的に使うようにしていますが、伝わった時の楽しいこともありながら言えなかった時の反省もあり、その度に色々と学ぶことができます。そのような教師自身の体験談を共有することで、生徒たちも英語を使ってのコミュニケーションについて少しでもイメージでき、また、普段の授業でも教師自身が英語を話すことはもちろんのこと、生徒同士でのやり取りや教師と生徒とのやりとりで生徒たちが英語でのコミュニケーションを楽しむことが少しでもできると思います。

授業では英語を身につけさせることを目的としながら「これから英語が必要になるぞ」と言い、生徒たちに英語でのコミュニケーションの大切さを伝えようとしているものの、その教師の普段の英語使用が一切なく英語を授業以外で読むこともましてや英語を話すこともなければ、学習者に英語や英語でのコミュニケーションの大切さを伝えることは難しいのではないかと思います。本当に英語が大切であれば、まずは日頃から少しでも英語を使いませんか。

学会やセミナーなどの場でも英語で行われることがごく普通になることを願います。学会やセミナーでの発表は絶好の英語の練習の機会です。教師として完璧でなければと思う方もいらっしゃるかと思いますが、生徒たちに間違えていいよやまずは取り組んでみようと伝えているのであればまずは教師からその挑戦をするべきではないでしょうか。そして、挑戦した感想や挑戦したけど失敗談も生徒たちに伝えてあげればいいかと思います。そうすることでモチベーションの高まる生徒も出てくるでしょう。私も自分が英語で発表した際や他の国の人と英語で話した際の話を生徒たちにするようにしています(私の場合は失敗談の方が多いですが)。

まとめ

今回は日頃から思っている教師の英語使用についてまとめてみました。色々と申し上げましたが、私自身の英語もまだまだ稚拙であるので、日頃の練習と学会や色々な場での実践あるのみと考えています。そこでの経験を通して、英語はもちろんですが生徒たちに色々と還元できればと考えてはいますが、まだまだ道半ばです。もちろん英語での発表や授業で英語を話すから偉いわけでも何でもありません。ただ、英語教師として生徒たちに英語を使うことができる人になってほしいと思うなら、まずは一緒に英語を多くの場でもっと使っていきませんか。生徒たちは毎日新しい困難に何とか立ち向かおうとしているのですから、我々教師も頑張らなければ(自戒も込めて)。

皆さんの実践や研究の少しでも役に立てば幸いです。Tomorrow is another day.

参考文献

文部科学省(2023)『令和4年度英語教育実施状況調査』文部科学省.

Last Updated on 2024年3月31日

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